京都府向日市のケースワーカーと生活保護受給者による死体遺棄事件はなぜ起きたのか。「過酷な職場環境と事件の関係性」を紐解く。

 

こんにちは。

 

エイダーズ山崎正徳です。

 

先月、京都の向日市で、生活保護ケースワーカーが生活保護受給者と共に死体を遺棄するという衝撃的な事件がありました。

 

この事件について、複数の援助職の方から「ブログに書いてほしい」というお話を頂いたので、この事件について私が感じることを書いてみます。

 

全て読むと10分くらいかかると思いますので、時間のある時にぜひ読んでみてください。

 

事件の詳細はこちらです。

 

アパートの自室で女性を殺害したとして、殺人容疑で再逮捕された橋本貴彦容疑者。一連の事件では生活保護を受給していた橋本容疑者の担当ケースワーカー、京都府向日市職員のY(29)と図越(ずごし)幸夫(52)の両被告が死体遺棄罪で起訴されたが、橋本容疑者はY被告を日常的に脅すなどして、主従関係を構築したとみられている。しかし、市はこの異常な関係を把握できず、組織的な対応も取れていなかった。専門家は事前に気付けなかった市の対応を疑問視している。

 

市によると、橋本容疑者はY被告に、威圧的な言動や長時間の電話などを繰り返していた。Y被告は「ケース記録」と呼ばれる日誌に保護費の増額要求や威圧的な態度、長時間の電話がかかってくることを書き込んでいた。

 

向日市も橋本容疑者が「処遇困難ケース」に該当すると判断。家庭訪問の際は基本的に2人態勢を取るなどの対策を取っていたが、Y被告の勤務態度に変化がなかったことから、担当を交代させなかったという。市は「問題はないと思っていたが、結果としてこのような事件が起こってしまった。なぜ異変に気づけなかったんだろうという思いだ」と話す。事件を受け、市は今月1日から生活保護の窓口に警察OBを配置したという。 

 

元ケースワーカーの関西国際大の道中隆教授(社会保障論)はケースワーカー時代の経験談として、「威圧的な言動を受けることは頻繁にあった」とし、「そのような受給者には来庁してもらい、複数の職員で対応すればトラブルは防げる」と話す。そのうえで「組織としての対応ができていないと感じる。警察など関係機関との連携が取れていないのが致命的だ」と指摘した。

 

私はこの事件をテレビのニュースで知ったのですが、その時点で「これは起こるべくして起きた事件だ」と確信しました。

 

まずは、この事件について、実際に生活保護ケースワーカーはどう思っているのかを聴いてみました。

 

以下、昨年度まで東京都の区役所でケースワーカーを務めていた方のお話です。

 

・組織のフォローがなさすぎる。

 

・ここまで有名で大変な受給者をずっと同じ担当者にしておくのがそもそもNG。上司や指導する立場の人は、親身に対応していたのか大きな疑問がある。上司が「知らなかった」なんて嘘だ。そもそも、記録に書いてあるんだから気づかない方がおかしい。見て見ぬふりをしていたのだろう。

 

・上司は、逃げるタイプの人だったのではないか。役所にはそういうタイプの管理職がけっこういる。上からサポートをしてもらえず、疲弊してダメになってしまうケースワーカーは少なくない。

 

・「受給者の橋本容疑者宅を二人体制で訪問していた」とのことだが、付いていく人はその都度変わっていたのでは?ただ担当のケースワーカーに付いていくだけで、「一緒にやっていく」という意識はなかったのではないか。担当のケースワーカーがここまで一人で抱えたということはそういうことだと思う。

 

・とにかくこのケースワーカーがかわいそう。誰も助けてくれなくて、背負ったのではないか。これは役所全体の問題だと思う。 

 

これは、ケースワーカーの方なら誰もが同意できる内容ではないかなと思います。

 

私も全く同感なのですが、私の役割はこれらを「人間関係の構造」できちんと説明することです。

 

ここから、この事件の問題の本質を解説していきます。

 

※ブログ執筆者  AIDERS 代表 山﨑正徳のプロフィールは  こちら 


「悪質なクレーマー行為を助長してしまう職場の環境」とは。

 

まず、初めに考えたいのは生活保護受給者である橋本容疑者に対する、市としての対応についてです。

 

報道を見る限り、日常的に担当ケースワーカーのYさんを脅して恐怖を与え、ケースワーカーの車を使ったり、買い物をさせたり、完全に使い走りにして主従関係を築いていた。

 

「日常的に威圧的な言動があることなどは記録に書いてあった」、にも関わらず組織として何の対応もしなかった。

 

つまり、橋本容疑者の悪質極まりない暴力的言動に対する、組織としての明確な境界線を一切設定していなかったのです。

 

「明確な境界線」というのはつまり、暴力行為(この記事内で使う「暴力」とは、身体的暴力だけでなく、脅す、威嚇する、電話を切らないなどの精神的暴力も含みます)に対する限界を設定するということです。

 

「これ以上やるなら警察を呼びます」

 

「大声で職員を威嚇するような行為をするなら、うちでは今後一切関われません」

 

このように、組織の役割を果たす上で支障になる暴力行為等に、明確に限界を設けること。

 

そして、この限界を越えてくる人には、「組織としての断固とした対応」をとること。

 

これが本当に大切です。

  

例えばですが、担当者から「暴言はやめてください」と伝えてもやめてくれない場合、管理職や責任者から「すでに弁護士と警察には相談しています。これ以上続くならこちらとしても看過できません」などと明確に組織としてのスタンスを伝える。

 

これだけでも解決するケースは多いんですよ。

 

一方で、担当者がクレーマーを一人で抱え込み、上司のサポートがない環境において、クレーマーはどんどんパワーをつけて要求をエスカレートさせていきます。

 

私は普段、クレーマーや暴力的言動を繰り返す人への対応について職場から相談を受けることがありますが、現場のスタッフと管理職で、明らかに困り具合に温度差があることは珍しくないんですよ。

 

現場は疲弊しているのに、管理職はあまり困っていない。

 

クレーマーが長期に渡り迷惑行為を繰り返すことができる問題の本質は、まさにそこなのです。

 

組織が暴力に対するスタンスを明確にせず、役職者が役割を果たさない。

 

現場のスタッフはクレーマーとの二者関係を強いられ続ける。

 

これこそ「悪質なクレーマーを職場が育てる環境」と言え、現場のスタッフは日常的に安全を奪われ続け、燃え尽きや退職者が量産されます。

 

※参考記事

◆利用者・患者からの暴言暴力への対応マニュアル⑥「暴力に対する職場の限界設定」


暴力被害を「よくあること」として仕事の一部にされ、ケースワーカーは孤立する。

 

この暴力に対する「限界設定」が特に苦手な職場を、私は二つ知っています。

 

一つ目は、介護や福祉の職場です。

 

利用者さんや患者さんからの暴言や暴力を受けることについて、「この仕事をしていればこれくらい当たり前」「イヤなら辞めれば?」と仕事の一部にしてしまう。

 

「おれが新人の頃、酔った患者さんに椅子を投げつけられたことあったぞ」「おれなんて首絞められたことあるから」みたいに、武勇伝のように語り、暴力に慣れることが仕事に慣れることであるかのように語られる。

 

暴言を受けた人が職場に被害を訴えようものなら、「弱い」「早く慣れなさい」なんて言われてしまう。

 

対人援助の職場は、人手不足が叫ばれているにも関わらず、未だにこんな根深い課題を抱えています。

 

生活保護ケースワーカーも同様です。

 

「早く慣れた方がいいよ」「ここにくればこれが普通だから」「長電話なんてよくあること」「みんな役所が終わってから自分の仕事するんだから」

 

激務で疲弊し、暴言を受けて傷ついた末に、周りからこんな言葉しかかけてもらえない。

 

「多少の暴力被害や激務は当たり前。早く慣れるべき」

 

これが多くのケースワーカーの現場に見られる実態です。

 

だから、職場に暴言などの被害を訴えること自体が「恥」という意識につながりやすく、問題を一人で抱え込む人はたくさんいるでしょう。 

そして、もう一つの限界設定が苦手な職場。

 

それは、役所などの公的機関です。

 

役所などに勤めた経験のある方なら誰でもわかると思いますが、それがどんなに理不尽で悪質なクレームであったとしても、公的機関は「クレームがあった事実」そのものを嫌う傾向があります。

 

つまり、理不尽で威圧的な言動を繰り返す人がいても、毅然とした対応をとることが苦手で、できるだけ摩擦を避けて穏便に済ませる方向で対応します。

 

例えば、電話で長時間暴言を繰り返す人に対して、「死ねとか殺すとか言われるととても苦しいです。電話を切らせて頂きます」と言って30分位で電話を切るといった対応ではなく、相手が納得するまで延々と説明し、いつまでも電話を切らない。

 

だから、悪質なクレーマーによる暴力的な言動が長期化し、時間と共にエスカレートしやすいのです。 

 

ここまで読んで頂くと、福祉事務所がどれだけ過酷でリスクの高い環境なのかわかりますよね。(もちろん、きちんと対応している職場もあることを補足しておきます)

 

暴力的な言動に対して明確な限界設定ができず、暴力被害が仕事の一部になる。

 

橋本容疑者によるケースワーカーへの長期に及ぶ支配行為を可能にしていた大きな要因は、職場環境であることに間違いないと思います。

 

※参考記事

◆利用者・患者からの暴言暴力への対応マニュアル①「管理職が知らないとまずい、安全衛生管理の法知識」

◆利用者・患者からの暴言暴力への対応マニュアル④「暴力被害を仕事の一部にしてしまう職場の特徴とは」


支配を受け続けた人が陥りやすい心理状態

 

次に、橋本容疑者と担当ケースワーカーの異様な関係性について考えてみましょう。

 

ケースワーカーが、受給者と共に死体遺棄を行う。

 

日常的に主従関係を築かされていたと言え、こんなことが本当に起こりうるのでしょうか。

 

人は、長期的に支配・コントロール行為を受けるとどうなるのか、説明していきます。

「支配・被支配の関係」とは、「力のあるものが弱いものをコントロールする関係性」のことです。 

 

記憶に新しいのは、日大アメフト部の悪質タックル事件。

 

あれも、監督から選手に対する日常的なコントロール行為がありました。

 

以下、支配を受け続けた人に起きる心理状態をまとています。

 

①相手の感情が自分の責任になる。

 

ちょっとわかりづらいですよね。これは、相手が自分の都合で勝手に怒っているだけなのに、「私の対応が悪いから怒らせてしまった」と相手に生じる感情を自分の責任にしてしまうのです。

 

②恐怖、不安、無力感に支配される。

 

とにかく支配者を怖れ、相手の機嫌を損ねないことが最優先になります。

 

③自信を喪失し、自責的になる。

 

支配を受け続けると、いくら相手の言っていることが理不尽だと感じても「私の考えの方が間違っているんじゃないかな」と自分の考えに自信が持てず、ネガティブになります。 

 

パワハラを受けている人に、「あれはパワハラだよ!人事に相談した方がいいよ!」と伝えても「確かに課長の言い方はきついんだけど、言っていることは間違ってないから。悪いのは私だし…」とやたらネガティブな反応が返ってくることってありませんか?

 

あれは、長期的に支配を受け続け、自信が喪失している状態なのです。

 

④暴力の後に急に優しくされると嬉しくなる。

 

とても怖い上司に理不尽にキレられて落ち込み、恐る恐るメールで謝罪したら「全然オッケー!こっちこそ言いすぎてごめんね!」と先ほどの怒りから一転して優しくされる。

 

こんな経験、あなたにもありませんか?

 

支配を受けて恐怖と嫌悪感でいっぱいの時に、急に優しくされると、不思議なことに相手に対して嬉しい気持ちになります。

 

「なんだ、この人はひどいやつだと思ってたけど、実は優しいんだな」「私の理解が足らなかったんだな」「この人を守れるのは僕だけかもしれない」

 

このようにして、自分から距離を縮めてしまうことがあります。

 

これはクレーマーがよく使う支配行為の典型です。

 

要求が通らないと相手の安全を奪い、要求が通ると急に優しくなり相手にすり寄る。

 

こうやって相手の感情を激しく揺さぶります。

 

相手への恐怖が強ければ強いほど安堵して嬉しくなりやすく、相手のことが嫌いなのか好きなのかよくわからない精神状態になり、ますます距離がとれなくなります。

 

これを、支配者に「巻き込まれる」というのです。 

担当ケースワーカーのYさんは昨年から橋本容疑者を担当し、支配を受け続けました。

 

101人の受給者を担当し、ただでさえ激務で大変な仕事なのに、毎日のように威圧され、業務を妨害され、疲労困憊だったことでしょう。

 

相手は過去に傷害致死や暴行事件を起こして何度も服役しています。

 

本当に怒らせたら、自分だって何をされるかわかりません。

 

恐怖や不安に支配され、自信を喪失し、正常な判断ができなくなります。 

 

ただただ怖い。怒らないで欲しい。

 

そのためには、使い走りでもなんでもやります。

 

日々のストレスは相当なものだったでしょうから、うつ病などの精神疾患に罹患していたり、不眠に悩んでいたとしても全く不思議ではありません。

 

疲労が重なれば重なるほど、感覚は麻痺し、判断力も奪われていく。

 

さすがに死体遺棄を行うことまで想像するのは難しいかもしれませんが、この二人が極めて危険な関係性であったことはわかりますよね。

 

※参考記事

◆バウンダリー(境界線)基礎講座4日目「支配・被支配の関係」

◆利用者・患者からの暴言暴力への対応マニュアル②「バウンダリー(境界線)を切り口にした関係性の理解」

◆利用者・患者からの暴言暴力への対応マニュアル③「悪質なクレーマーが多用しやすい5つのコントロール法」


あまりにも致命的だった「職場の無関心」

 

これまで、職場のクレーマー対応の問題点、そして境界線の崩壊した支配・被支配の関係について説明しました。

 

ここまででも、今回の事件がどのようにして起きたのか、理解は深まったのではないかと思います。

 

でも、まだこれだけでは不十分です。

 

もうひとつ、今回の事件を成立させるために必要なピースがあります。

 

なんだと思いますか?

 

どうしてこれが成立したのか、考えてみてください。

 

もしあなたがケースワーカーYさんの同僚なら、どうしていましたか。

 

あなたが上司なら、Yさんの記録を読んでどんな対応をしていますか。

 

何をしてあげたいと思いますか?

 

あなたが何をすれば、このYさんの事件への関与は防げたと思いますか?

 

この質問でなんとなく気づくのではないでしょうか。

 

事件を防ぐためにできることって、たくさん出てきませんか?

 

実はそんなに難しいことではないはずなんですよ。

 

どうしてできなかったのか?

 

なんで?

 

ちょっと理解しがたいですよね。

 

そうです。

 

Yさんは、ずっと職場で孤立しているのです。

孤立といっても、コミュニケーションがなかったとは思いません。

 

挨拶、雑談、事務的なやりとりなどはたくさんあったと思います。

 

「大丈夫?」

 

「今日も大変だったね」

 

「疲れてない?」

 

こういった声がけをしていた人ももちろんいたと思います。

 

でも

 

Yさんがここまで追いつめられていたことを、職場が全く把握していなかった。 

 

大変そうだったけど、まさかこんなことになるとは…

 

どうして相談してくれなかったのか…

 

職場の人たち(特に管理職)は、おそらくこんな気持ちなのではないかと思います。

 

「大丈夫?」と声をかけるのはもちろん大切です。

 

でも、本人が「大丈夫です」と言ったから「大丈夫なんだ」で終わるのではなく

 

「勤務態度に特に変化がないから担当交代しなくていいだろう」と思うのではなく

 

より一歩踏み込んで、相手の気持ちを想像することが「人に関心を持つ」ということなのです。

 

「大丈夫と言ってるけど、顔色が悪いし口数が少ないし、毎日橋本さんにつまかっているし、私なら絶対に具合が悪くなる。きっと彼も相当苦しんでいるに違いない」

 

「彼は抱え込みやすいところがあるし、責任感も強いから『もう無理です』と自分から助けを求めることをしてこないかもしれない。だから気をつけないと危ないぞ。できるだけ状況を把握して、彼の体調も確認しておかないと」

 

このようにして、周りがYさんにしっかりと関心を向けてコミュニケーションをとっていたのか。

 

ここなのです。

 

これさえきちんとしていれば、いくら職場のクレーマー対応がまずくても、支配を受け続けても、これほど深刻な事態には陥らなかったはずです。

 

つまり、今回の事件を成立させた最大の黒幕は

 

「職場の無関心」

 

まさにこの一言に尽きるのではないでしょうか。

 

※参考記事

◆バウンダリー(境界線)基礎講座6日目「無関心の関係」

◆利用者・患者からの暴言暴力への対応マニュアル⑤「被害を受けたスタッフへのサポート」


「無関心」は個人の問題ではなく、職場のシステムの問題である。

 

ここで強くお伝えしておきたいのは、私はこの職場の人たちを非難するつもりでこの記事を書いているわけではありません。

 

「Yさんを孤立させ、追い込んだのはあなたたちだ!」なんていう気持ちは毛頭ないのです。

 

なぜなら、生活保護ケースワーカーの職場環境を聴いていると、無関心にならざるを得ないことがわかるからです。

 

・とにかく激務。日中は受給者への対応でろくに休憩をとる時間もない。タイムマネジメントなんて一切できない。役所が閉まってから、ようやく自分の仕事にとりかかれる。

 

・忙しいのに毎日電話をかけてきて、なかなか電話を切らせてくれない受給者に時間を奪われる。

 

・受給者から恨まれたり、罵倒されたりすることもある。

 

・病院や施設など、関係機関から「退院時に迎えにきてください」「家庭訪問してください」などと対応を求められ、忙しいのに丸一日つぶれてしまうことがある。でも、対応しないと「福祉は何もやらない!」と悪者にされてしまう。

 

・家に帰っても仕事のことが頭から離れず、休日も思い出して嫌な気持ちになることが多い。

 

・体調は常に悪い。たまには友達と飲みに行きたくても、翌日の仕事のことを考えると早く帰って寝たい。

 

・同僚や上司、それぞれが自己流で、福祉事務所としてのスタンダードの対応や方針を教えられる人がいない。どこまでやるべきなのかが定かでなく、自分で判断しないといけないので毎回不安。

 

・辞めたいと思うことはいつもだけど、公務員を辞める決断は簡単ではない。 

  

 

このような環境に1年もいれば、多くの人が過労や燃えつきのような状態に陥りやすくなります。

 

毎日自分のことだけで精一杯。

 

今日は何時に帰れるかな。

 

今日は○○さんから電話がなければいいな。

 

とにかく疲れた。早く帰って眠りたい。

 

こんな状態で、同僚に関心を示して声をかける気持ちの余裕なんて、ほとんどの人が持ち合わせていないのではないでしょうか。

 

むしろ、面倒なことに首を突っ込んで巻き込まれたくない。

 

自分まで暴言を受けたり、嫌な思いをしたりするのは辛い。

 

それよりも、今日一日、無事で終わりますように。

 

こんな気持ちになるのは自然のことで、決して責められるべきものではない、と私は思っています。

 

このように、日常的にお互いに関心を持ちづらい職場のシステムが出来上がる。

 

こうした「無関心」の土壌があってこそ、今回のような私たちの想像を遥かに越えるレベルの事件が起きてしまうのです。

 

※参考記事

◆激務で毎日辞めたいと思う生活保護ケースワーカーさんが、自分自身を見失わないために伝えたいこと。 

◆徹底解説!神戸市の教員間いじめ問題。「暴力が蔓延し崩壊する職場」の人間関係の構造と特徴とは。


最後に伝えたいこと。

 

「今回の事件は起きるべくして起きた」

 

私はこの記事の最初にこう述べましたが、皆さまにもご理解いただけましたでしょうか。

 

この記事をぜひ現場のケースワーカーさんや福祉事務所、役所の方に読んでもらいたい。 

 

これは、どの現場でも起こりうることで、決して他人事ではない。

 

自分たちが置かれている環境の危険性を客観視してもらい、その上でできることを本気で考えてもらいたい。

 

私は、そんな気持ちでこの記事を書きました。

 

また、「この事件をブログに書いてほしい」と言ってきた数名の援助職の方とは、東京で奮闘する生活保護ケースワーカーさんです。

 

皆さんが伝えたいこと、発信したいこと、それを私に託してくださったんだろうと思っています。

 

ありがとうございます。 

 

最後に

 

今気がかりなのは、向日市の福祉事務所のケースワーカーさん達です。

 

まだ事件から1カ月半くらいですが、現場の人たちはどうしているのでしょうか。

 

大きな心の傷を抱え、気持ちの整理もできないままに、今日も目の前の仕事を必死にこなしているのでしょうか。

 

気づいてあげられなかった

 

自分のせいだ

 

私がもっと親身に話を聴いてあげていれば

 

私は前から危ないと伝えていたのに、ひどい職場だ!

 

これほどの大きな事件があったのですから、上司や同僚の皆さんは、強い罪悪感や自責はもちろん、職場への怒りや不信感などで苦しんでいるのだろうと思います。

 

また、今後自分が同じような受給者に当たらないか、不安や恐怖も強いでしょう。

 

不眠や動悸、食欲低下などの体調不良で辛い思いをしている人もいるはずです。

 

それでも今日も激務に追われているとしたら、深刻なトラウマを抱えるリスクが極めて高く、今すぐに心のケアが必要です。

 

職場で起きるこのような惨事の際、最低限知っておいて欲しい心のケアの方法についてまとめたブログ記事がありますので、最後に紹介させて頂きます。

 

職場で自殺者が出たら、今すぐ読んでほしい職場の対応マニュアル

 

自殺を切り口に説明してますが、今回のような事件にもお役に立てる内容です。

 

ぜひ読んでみてください。

 

この記事が多くのケースワーカーさんたちに届きますように。  

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

 

※参考記事

▶千葉県の生活保護法指導監督職員研修において、「ケースワーカーの離職と燃え尽きを減らす、管理職の役割と実践法」をテーマに講演を行いました。

▶東京23区の生活保護ケースワーカーを対象に、「メンタルセルフケア」をテーマに講演を行いました。

▶千葉県の生活保護法担当地区担当員研修において、「ケースワーカーの燃え尽きを防ぐ!ストレスに強くなり健康に働き続けるためのストレスマネジメント 」をテーマに講演を行いました。