対人援助職のためのバウンダリー(境界線)チェックリスト

  

今回は、安全な人間関係の距離感であるバウンダリー(境界線)について、介護や福祉、医療現場などで働く対人援助職の方に向けて記事を書きます。

まず、バウンダリー(境界線)という言葉を初めて聞く方は、時間のある時にこちらの記事を読んで頂くと良いかもしれません。

 

ストレスに強くなる!人間関係(バウンダリー)の境界線の引き方

 

※ブログ執筆者  AIDERS 代表 山﨑正徳のプロフィールは  こちら  


家族や友人のような距離感になることのメリットとデメリットを把握する。


対人援助職にとって、目の前の援助対象者(利用者や患者)と適切な距離を意識して関わることは本当に大切です。

 

私たちは「専門家」であり「家族」でも「友達」でもありません。

 

専門家としての距離感を適切に学ばずに、無自覚に家族的な距離感になることで、様々なトラブルにつながりやすくなります。

 

福祉施設などでよくありがちなこととして例を挙げます。

 

はじめは「山崎さん」と利用者さんを呼んでいたのに、6か月後には親しくなって「やまちゃん」と呼ぶ。

 

6か月でだいぶ心理的な距離が近くなっているのはわかりますよね。

 

それ自体が悪いとは全く思いませんし、そういう距離感の方がうまくいく場面はたくさんあるはずです。

 

そういう距離感が適切な職場であれば、それでいいと思います。

 

ただし、家族や友人のような距離感で支援を行うのであれば、そのメリットとデメリットをきちんと把握して行うべきだと思うんですよ。


利用者との距離感に無自覚な援助職は、トラブルが増える。

 

私が伝えたいことは、「バウンダリー(境界線)を保とう!」と言うことではない。

 

本当に伝えたいのは、「バウンダリー(境界線)を意識して関わりましょう!」なのです。

 

家族的な距離感でやるなら、そのメリットとデメリットを常に把握しておくこと。

 

上司や同僚とよく話し、状況に応じて距離を変えていくこと。

 

こういう習慣が大切なのです。

 

ただ、実際はどうかというと、ほとんどの方が無意識、無自覚に距離を縮めています。

 

人によっては、そうやって親しくなることをすごく誇らしげに語る人もいます。

 

利用者さんと個人的な秘密を共有したり、携帯番号やメールアドレスを教えたり、挙げたらキリがないと思います。

 

繰り返しになりますが、リスクを把握せずに距離を縮めることは、トラブルにつながります。

 

そのトラブルを防ぐために、今日は、あなたが利用者さんや患者さんとどのような距離感で関わっているのかをチエックして頂こうと思います。

 

ぜひチエックリストをやってみてください。

 

※援助職、利用者の境界線が崩壊することで起きる問題については、以下のブログを参考にしてください。

「NGT48事件」から学ぶ、対人援助職の共依存がもたらす、離職・燃え尽き問題の構造と対処法 


利用者さんとの距離感を点検しましょう!

 

◆距離が近くなる考え方(摩擦が生じやすくなる距離感)

 

□ 私があなたを何とかする。

□ あなたのためならどんなことでもやってあげたい。

□ 私こそが最もあなたを理解している。

□ 私が担当で良かったと思ってほしい。

□ 私はあなたを正しい方向に導くことができる。

□ 私の期待する通りに自立・回復してほしい。 

◆適切な距離感をつくりやすい考え方

 

□ 私は専門性とサービスの契約に基づいて、あなたに援助を行う。

□ 私にできることには限界がある。

□ 私はあなたと問題を分かち合い、一緒に取り組む。

□ 私とあなたは対等である。

□ あなたにはサービスと担当者を選ぶ自由と責任がある。

□ 私はあなたが自分の力で目的を果たせるよう、手伝う


大切なのは、距離感を意識することを職場の習慣にすること。

 

チェックリストを行いながら、普段の職場でのあなたがどんな思いで利用者さんと向き合っているのか、振り返ってみましょう。

 

距離が近い考え方に偏りがちなあなた。

 

心は熱くてけっこうですが、頭はクールに。

 

ゆっくり深呼吸をして、落ち着いて利用者さんと向き合いましょう。

 

また、あなたが担当している利用者さんや患者さんの顔を思い浮かべて、ひとりひとりへの関わりをチエックリストで点検してみるのも面白いですよ。

 

担当している利用者さんによって思いの強さにばらつきがあれば、どうしてそうなりやすいのかを考えてみることです。

 

そこに、対人援助職を志したきっかけだったり、過去に傷ついた体験などが絡んでいることも少なくありません。

 

例えば、母親の介護への悔いがあって介護職を目指した方は、母親に似たような利用者さんを見ると、ついつい思いが強くなります。

 

また、新人時代に男性の患者さんから怒鳴られて怖い思いをした経験がある看護師さんが、声の大きな男性患者さんが来ると怖くなって、逆に距離をとりすぎてしまうなんていうこともあるのです。

 

ご自分の課題を整理してみたい方は、ぜひカウンセリングを受けてみてください。

 

たった一回でも今よりも遥かに自己理解が深まるはずです。

 

対人援助職として、バウンダリーをより深く学び仕事に活かしたい方は、ブログだけでなく、以下のセミナーもお勧めですよ。(動画でも受講可能です!)


 

【入門コース】対人援助職のためのバウンダリーセミナー