こんにちは。
エイダーズ山崎正徳です。
職場で自殺者が出た場合の職場の具体的な対応方法について、第7回は「フォローアップ」について解説します。
これまでの6回は以下になります。
①自殺者が出て大混乱の職場が、必ず知っておくべき「急性ストレス反応」のリスクと対処法
②「職場で起きる自殺」への会社の対応と、PTSD(心的外傷後ストレス障害)発症の関連性とは
③「職場で起きる自殺」の事後対応。担当者選びで「絶対にやってはいけないこと」とは。
④職場で自殺者が出たら、会社はその事実をどこまで社員に伝えるべきか。
⑤自殺者が出た職場が、初めの2週間で行うべき「ショックを受けた社員への対応方法」
⑥自殺者が出た職場が「話題をタブー視」することのリスクと、「安全に語り合える環境づくり」の重要性
※自殺者が出た場合の職場の対応については、以下の記事に流れをまとめています。
1ヶ月経っても症状が改善しない社員は専門家につなぐ。
惨事が発生し、10日前後で個人差が出やすいという話をしましたが、その次に、より注意して社員の状態を観察すべき時期は「1ヶ月」です。
これまで説明してきましたが、急性ストレス反応は、通常2〜4週くらいかけて消失していきます。
私の経験においても、(惨事のレベルによりますが)1ヶ月くらい経過すれば多くの人が症状の改善、消失を実感しています。
「あの時はどうなるかと思ったけど、今はだいぶ落ち着いてきました」
「初めの2週間くらいは本当にきつかったですけど、今は眠れてます。言われた通り、確かに1ヶ月くらいで良くなるものですね」
こんな風に語る方が多く、それに伴い、職場も徐々に落ち着きを取り戻してきます。
ようやく嵐が過ぎ去ったような、そんな感覚に近いと思います。
担当者は、ここで安心してはいけません。
ここが重要なタイミングです。
多くの人が回復している一方で、この時期においても未だに眠れなかったり、恐怖やフラッシュバックに苦しんでいたり、症状が治まっていない人もいます。
つまり、PTSDの可能性が考えられる人たちです。
そんなリスクを抱える社員に職場が早期に気づき、専門家につなげるなどのサポートが必要になります。
そのためにも、このタイミングで改めて社員に声をかけて状態を確認しましょう。
その時点で未だに状態が良くない社員がいれば、心療内科や精神科を受診させる、職場に産業医やカウンセラーがいれば面談を受けさせるなどの対応が必要になります。
ここで該当する社員にスムーズに診察やカウンセリングを受けてもらうためにも、これまで説明してきた通り、1ヶ月の間に職場が適切な対応をとることが大切です。
社員が職場に対する安心と信頼を感じること、そして急性ストレス反応とPTSDについての正しい知識をつけておくことで、対応がしやすくなります。
1年後の「記念日反応」に注意する。

ここまで、自殺が発生してから1ヶ月の間に職場がとるべき対応について、最低限押さえてほしい内容を説明しました。
1ヶ月が経過した後も、調子を崩している社員がいないか観察して適宜声をかけること、そして安全に語り合える環境をつくること、この二点に留意していきましょう。
2ヶ月後、3ヶ月後、一年後など、惨事が原因と思われる不調者が突然出ることは珍しくありません。
例えば、自殺が発生した時にとても責任の大きなプロジェクトを担当していた人が、プロジェクトがひと段落したタイミングで燃え尽きて会社に来れなくなる、ということもあります。
大きなショックを受けた時に強い緊張感で自分を保たざるを得ない立場の人がいたら、緊張が緩む時期に特に注意を払いましょう。
また、「記念日反応」と言って、命日や亡くなった時期になると辛い出来事を思い出し、具合が悪くなる人もいます。
よって、一年後もリスクが高まる時期と捉えて、社員への声がけや情報提供を行いましょう。
次回に続きます。
続きはこちら → 自殺者が出て大混乱の職場が、今すぐに惨事対応の専門家を頼るべき理由
セミナーのご案内
◆ストレスが減る人間関係の距離感がわかる!対人援助職のためのバウンダリー(境界線)セミナー【入門コース】 2019年5月24日(金) 定員5名 詳しくは こちら
◆職場の惨事ストレスマネジメントセミナー ~自殺、事故死、殺人、災害など、突然の惨事に見舞われた職場は、まず何をすべきか~ 2019年6月14日(金)定員5名 詳しくは こちら
◆ストレスが減る人間関係の距離感がわかる!対人援助職のためのバウンダリー(境界線)セミナー【実践コース(共依存の関係)】 2019年6月21日(金) 定員5名 詳しくは こちら
◆ストレスが減る人間関係の距離感がわかる!対人援助職のためのバウンダリー(境界線)セミナー【実践コース(支配・被支配の関係)】 2019年7月12日(金) 定員5名 詳しくは こちら
ブログテーマ
初めに読んでほしいお勧めブログ記事
◆なぜ援助職の現場で虐待が起きるのか、「巨人の星」で説明します!
◆「NGT48事件」から学ぶ、対人援助職の共依存がもたらす、離職・燃え尽き問題の構造と対処法
◆職場の喧嘩を上司のあなたが「仲裁しよう」としているから、いつまでも問題が解決せず繰り返されるんですよ。
◆教えてくれない職場は、「教えること」を教えないから「教えられる人」が育たない。
◆「思考」と「感情」の違いがわからないと、ストレスが倍増する!
◆職場のスタッフの本当の悩みに経営者のあなたが気づかない限り、人材不足などの問題はなくなりませんよ。
◆あなたの職場ですぐに新人が孤立するのは、「業務内容」は教えても「職場の小さな当たり前」を教えていないからではないですか?
◆共依存タイプの上司は、部下の自立を嫌い、部下の依存や不安を好む。
◆鳥取県養護学校の看護師一斉退職に見る、対人援助職の使命感の強さが生む「依存」と「機能不全」
◆バウンダリー(境界線)基礎講座1日目「人間関係の大原則が学べるバウンダリー(境界線)とは?」
◆働きやすい職場にしたければ、「相棒」の杉下右京を見て学べ!
◆悪質なクレーマーやモンスター患者対応の基本は、職場としてのバウンダリー(境界線)を強化すること!
◆自分のことを長い目で見れば、今のあなたの弱みなんていつかは強みに変わるという話