自殺者が出た職場が「話題をタブー視」することのリスクと、「安全に語り合える環境づくり」の重要性


自殺の話題をタブー視すると、精神的な負担が強くなる。

 

「今回の自殺のことって、できるだけ話題にしない方がいいんですよね?」

 

これは、惨事対応の際に担当者からよく頂く質問です。

 

まず結論からお伝えすると、自殺の話を変にタブー視して話題にできない環境はお勧めしません。

 

なぜなら、強いストレスにより生じた辛さや悲しみ、不安や恐怖といった負の感情は、仲間と共有することでより早く癒されるからです。

 

誰にでも経験はあると思うのですが、

 

例えば怖い学校の先生がいたとして、クラスの子が「あの先生めっちゃ怖い!苦手!」と言ってくれるのと、誰もそれについて触れないのとでは、心の負担が全く違うと思いませんか?

 

クラスのみんなが一緒に「怖い」「苦手」と言ってくれるから、自分も楽になるし、「怖いと思ってもいいんだ」と思える。

 

自分のノーマルな感情を肯定できれば、精神的な負担は軽減するのです。

 

一方で、誰も「怖い」「苦手」と口にしないとしたら。

 

「怖いなんて思う私が弱いんじゃないか」

 

「みんなが我慢してるんだから、自分一人が弱音を吐くわけにはいかない」

 

こうやって、ノーマルな感情を肯定せず、思考で処理してバランスをとろうとする。

 

これが、身体にも心にも良くないのです。

惨事の際もこれと同じです。

 

大きなショックを受けたことによる不安、恐怖、悲しみ、怒りなどの感情は、同じ経験をした仲間だからこそ共有できるし、癒すことができます。

 

だからこそ、無理に話題をタブー視せず、安全に語り合える環境が理想です。

 

「私、正直まだ怖くてさ。やっと眠れるようにはなってきたんだけど、どうしても職場に入ると緊張しちゃってね」

 

「おれも、未だにあの会議室の前を通れないもん。だからわざわざ遠回りしてるもんね。こういうのって本当に治るのかな。これがずっと続くのかなと思うと恐ろしいよね」

 

こういうやりとりができる環境か否かにより、回復具合がだいぶ変わってきます。

 

タブー視して気持ちを共有できない職場では、気持ちを抑圧して働く人が量産され、PTSDのリスクが一気に上がります。

 

ある職場では、惨事から半年経ってから、これまで普通に働いていた女性が急に会社を休みがちになりました。

 

私が会って話を聴くと、惨事があってからずっと寝つきが悪くて困っていたようです。

 

ただ、「みんな何事もなかったように働いてるから、言ってはいけないと思った」と一人で抱え込んでいたことがわかりました。

 

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まずは、管理職から自分の気持ちを語ってみる。

 

繰り返しますが、自殺の問題をタブー視せず、適切に語れる環境が大切です。

 

そのためにも、管理職の方から、自分のノーマルな気持ちを率先して語ることをお勧めします。

 

「こんな時に管理職が弱音を吐くのはどうなのかな?」と思う気持ちはわかります。

 

ただ、こういう時だからこそ、管理職が適切に自分の感情を語ることで、救われる人は必ずいます。

 

「私もまだ辛くて、正直調子良くないんです。だから皆さん、くれぐれも無理しないでください。私も自分の体調は常に上に報告してますから」

 

こんな感じでいいので、誰もが安心して語れる環境を作りましょう。

 

補足としては、敢えて話題に触れないことで自分を保っている人もいます。

 

くれぐれも語ることを強要しないよう、ご注意ください。

 

「無理に語らせる環境」ではなく、「語りたい人が安全に語れる環境」が大切です。

 

次回に続きます。

 

続きはこちら → 職場で自殺者が出たら、押さえておきたい「1か月後のフォローアップ」と「記念日反応」


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