こんにちは。
エイダーズ山崎正徳です。
職場で自殺者が出た場合に知っておいて欲しい具体的な対応について、第4回は「社員への情報開示」の説明をします。
※これまでの記事はこちらです。
①自殺者が出て大混乱の職場が、必ず知っておくべき「急性ストレス反応」のリスクと対処法
②「職場で起きる自殺」への会社の対応と、PTSD(心的外傷後ストレス障害)発症の関連性とは
③「職場で起きる自殺」の事後対応。担当者選びで「絶対にやってはいけないこと」とは。
※自殺者が出た場合の職場の対応については、以下の記事に流れをまとめています。
自殺の事実をきちんと社員に伝えるべき?
今回は自殺という事実の扱いについて、とても大切な話をします。
あなたの職場のオフィスで自殺が起きたとしたら、もうその事実は隠しようのないことです。
状況にもよるでしょうが、現場のスタッフはすぐに事実を知ることになりますよね。
ただ、もし自殺の場所が自宅など、職場以外だったら。
例えば、社員の家族から電話があり、社員が亡くなったこと、そしてそれが自殺によるものであると知らされたとしたら。
その事実をどこまで職場で共有すれば良いのか?
自殺まで伝えるべきなのか?
ここに頭を悩ませる方は少なくありません。
それは当然のことです。
亡くなった事実を知っただけでも、現場のスタッフは計り知れない衝撃を受けます。
そんなスタッフ達に、亡くなった原因が自殺であることまで伝えたら、どうなってしまうのか。
どれだけの混乱が起きるだろうか。
考えただけでも恐ろしいですよね。
そのため、良かれと思って、自殺の事実を伝えず隠す。
亡くなった事実だけ伝え、後は会社も知らないことにする。
こんな対応をする職場は少なくありません。
お気持ちはとてもよくわかりますよ。
ただ、これだけはご理解ください。
自殺の事実を隠し通すことは、相当に困難なことなのです。
必ず、どこからか情報が漏れます。
亡くなった社員と仲の良い同僚などは、当然ですが家族と連絡をとったりして、真実を知ろうとします。
自分の親しい人がある日突然亡くなったわけですから、理由を知らないまま終われないというのは、ごく自然なことですよね。
特に今はSNSがありますから、亡くなった本人と関係のある人に連絡を取ろうとすればそこまで難しいことではないのです。
こうして、職場が自殺という事実を隠していたことが社員に知れた場合。
こちらの方がリスクが大きく、職場が被るダメージが倍増します。
「事実を伝える」よりも「事実を隠す」ことのリスクを知る。
「何か都合が悪いことがあって隠したんじゃないのか?」
「かなり残業させてたし、職場が原因なんじゃないのか?」
「どうして私たちにそんな大切なことをちゃんと教えてくれないの?ひどい!」
同僚が急に亡くなり、しかも自殺だったという事実を知り、大きなダメージを受けた社員の怒りや悲しみ。
これが、職場に強く向かいやすくなります。

当然ながら職場はより混乱し、全員が更なる負担を強いられます。
本来は全員で危機を乗り越えるべきところなのに、職場への不信感や怒りで傷を深め、疑心暗鬼になり、コミュニケーションが減り、犯人探しが始まる。
これは、自殺に留まらず、職場の惨事でとてもよく起きることです。
このような更なる混乱を招かないためには、職場が正しい知識を持ち、適切な対応をとっていくこと。
これに尽きます。
そのためにも、自殺の事実を伝えるリスクよりも、伝えないことのリスクを知ってください。
情報はできるだけ隠さずに現場に降ろすこと。
これを意識してください。
ただし、自殺の手段や亡くなっていた時の様子などの詳細は控えた方がいいでしょう。
具体的なことを伝えることでよりショックを受けてしまう人も現れます。
また、全ての情報が揃うまで伝えないという対応も、現場に不信感を持たれやすいので気をつけましょう。
職場のスタンスとしては、わかっていることは適宜現場に降ろす、という形が望ましいです。
そして、わからないことは変に濁さずに、はっきりとわからないと伝えること。
「今の時点でわかっているのはここまでで、後はわからないから連絡を待っているところです」のように、職場として社員に伝える気持ちがあるという姿勢を示し続けること。
これが社員の職場への安心感につながります。
次回に続きます。
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