こんにちは。
エイダーズ山崎正徳です。
職場で自殺者が出た場合、大きなショックを受けた社員に発症する急性ストレス反応と対処法について、以下の記事で説明しました。
自殺者が出て大混乱の職場が、必ず知っておくべき「急性ストレス反応」のリスクと対処法
今回は、より強いダメージを受けた人に起きやすいPTSD(心的外傷後ストレス障害)について説明します。
※自殺者が出た場合の職場の対応については、以下の記事でおおまかな流れを学ぶことができます。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?

PTSDという言葉自体には皆さん馴染みはあるはずです。
「学生時代の部活が本当に厳しくて辛くて。今でも顧問の先生に似た背格好のおじさんをみると怖くなるんだよねー」
「新人時代にメールの誤送信しちゃって、それが大問題になってね。あれが未だにトラウマで。大事なメールを送る場面になるとドキドキして何回も何回も確認しちゃうんだよね。いわゆるトラウマってやつ」
こんな会話をされたことはありますよね?
メールの誤送信をしてしまい、しばらく怖くて送信の場面になるたびにドキドキする。
家に帰って悪夢を見たり、休みの日に突然怒られたことを思い出し嫌な気分になる。
誤送信の直後に出るこれらの反応が急性ストレス反応。
前回説明した通り、2週〜4週で症状が軽減し消失します。
ただ、この反応が1ヶ月経っても治らずに続く場合、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断される可能性が出てきます。

PTSDは、いわゆる「トラウマ」です。
大事なメールを送る場面になる度に、動悸がしたり、嫌なことを思い出したり。
こんなことがいつまでもいつまでも続くのです。
職場での惨事もこれと一緒です。
PTSDになると、いつまでも職場に対する恐怖が消えなかったり、不眠やフラッシュバックなどに悩まされます。
健康問題が長期化すれば、ミスやトラブル、欠勤、休職、退職など、職場の生産性にとても大きな影響を及ぼします。
つまり、職場が今すぐに取り組むべきことは、大切な社員がPTSDという深い心の傷を負ってしまうことを防ぐことです。
そのために、正しい知識を持ち、適切な対応をしなければなりません。
※関連記事(PTSDと克服について詳しく解説しています)
職場が対応を誤れば、社員は簡単にPTSDになる。
職場としての望ましい対応を、先ほどのメールの誤送信の例で考えてみます。
① 誤送信で落ち込んでいる社員をみんなの前で叱責し、その後も「おまえのせいで今日は仙台まで頭を下げに行くんだよ。大変なことをしてくれたな!」とことあるごとに叱責し、職場での安全を奪う行為を上司が行った場合。
② 落ち込む社員に「これだけ毎日メールを送ってるんだから、誤送信なんて誰に起きてもおかしくない話だよ。あなたが毎日頑張ってるのはみんなわかってる。気にするなと言われても気にしないのは無理だろうけど、大丈夫だから」と労い、ランチに誘ったりしてこまめに声をかけた場合。
①と②を比べてみて、あなたならどちらの対応を望みますか?
どちらの方が心が軽くなり、早く通常のパフォーマンスに戻れそうですか?

満場一致で②ですよね。
①の場合、誤送信というミスで受けた大きなショックをに加え、傷口に塩を塗るような上司からの叱責で、より傷口が深くなります。
職場での安全が奪われ、緊張感が増し、孤立し、より強いストレスにさらされ続けます。
結果として、急性ストレス反応の症状が軽減せず、悪化し、PTSDになります。
これは、ケガをしたスポーツ選手に監督が「甘えるな!」なんて言ってさらに緊張感を与えて試合に出し続けるようなもので、良くなるものも良くなりません。
症状の悪化に加え、職場に対する怒りや恨みが強くなるケースもとても多いのです。
つまり、急性ストレス反応に晒されている社員への対応を間違えると、PTSDになってしまうリスクがある。
加えて、「職場が何も対応してくれなかった」「ひどい職場だ。だから自殺者が出るんだ!」と強い怒りや恨みにつながるリスクもある。
だから、職場が正しい知識を持って、適切な対応を行うことが必要です。
あなたの職場で、まさに今惨事が起きた直後であれば、この1ヶ月が本当に大切だということを、改めて強調させていただきます。
ここで先ほどの②のような支援を社員が受けることで、症状の軽減だけでなく、職場への大きな安全、信頼を感じることができるのです。
次回から、そのための具体的な職場の取り組みを説明していきます。
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