こんにちは。
エイダーズ山崎正徳です。
このブログ記事は、主に職場で自殺者が出てしまい、何をどう対応したら良いのかわからず、今すぐ使えそうな情報を集めている責任者、担当者の方に向けて書きます。
まず、自殺者が出て混乱している職場がとるべき対応の概要については、以下の記事でマニュアルとして説明しています。
まずはマニュアルから目を通して頂くとよりわかりやすいと思います。
この記事では、「職場で自殺者が出た」という非常に大きなショックを受けた社員に起きる心身の反応について、より具体的に解説します。
自殺の事実を知った社員に、何が起きるのか。
それでは、早速話を始めます。
職場で自殺者が出ると、社員にどのような影響が出るのか
まずはここから理解してください。
職場で自殺者が出るということは、言うまでもなく、普段経験することのない非常にショックの大きな出来事です。
目撃者はもちろん、前日に会話した人、日常的に関係が濃かった人などを中心に、とても強いストレスに晒されていることでしょう。
一睡もできない、寝てもすぐ目が覚める、涙が止まらない、食欲が全くない、怖い、苦しい、怒り、とにかく落ち着かないなど、心身の様々な反応に悩まされます。
これらは、急性ストレス反応といって、「普段経験しないような強いストレス」を受けた際に誰にでも起きるノーマルな反応です。
急性ストレス反応でよく見られる症状を紹介します。
心 … 恐怖、強い不安、落ち込み、イライラ、怒り、自分を強く責める、やる気が起きない、悲しみ、ハイテンション、など。
身体 … 動悸、吐き気、涙が止まらない、頭痛、胃痛、腹痛、眠れない、寝てもすぐに目が覚める、悪夢、強い緊張感、食欲がない、など。
行動 … ミス、電話に出ない、仕事を休む、人に会いたくない、話したくない、お酒をたくさん飲む、ずっとスマホをやっている、仕事や趣味に過剰にのめりこむ、喧嘩、口論、など。
その他の反応として代表的なものが以下になります。
・その時の苦痛や感情、映像などが何度も蘇るフラッシュバック
・その場所や話題を避ける回避行動
・音や刺激に過敏になる過敏・過剰な行動

これらの反応の中で、自殺の場合に顕著に出やすい反応が「罪悪感・自責感」です。
「気づいてあげられなかった」
「昨日美味しいパン屋さんの話を笑顔でしていたけど、本当は私に何か相談したかったのではないか」
「仕事を頼みすぎたかもしれない」
こんなふうに、本人との関係が密であった人ほど罪悪感や自責感が強くなります。
また、「あんなに彼に仕事をさせていた職場が悪い!」「彼女があんなに困っていたのに助けなかったプロジェクトのメンバー全員がひどい!」など、怒りや不信感の感情も強く出やすくなります。
この出来事を機に人間関係が悪化し、更なる混乱を招くということも珍しくありません。
急性ストレス反応は、誰にでも起きるノーマルな反応である。
私はこれまで、自殺を初めとした多くの惨事の現場に対応してきましたが、急性ストレス反応に苦しむ方の多くは、「私の心が弱いからではないか」「もっと強くならなきゃ。みんながんばってるのに」と、自分を責めています。
自殺という事実だけでも壮絶な体験で、計り知れないストレスを浴びています。
それに加えて眠れないし体調が悪いし、それでも仕事はしないといけない。
そんな過酷な状況にも関わらず、「もっと強くならなきゃ」と自分を責める。
私はそんな方たちとお会いする度に、胸が強く痛みました。
本当に苦しい状況です。
私がお伝えしたいこと。
それは、
今必要なのは「強くなること」ではない。「正しい知識を持つこと」なのです。
大きなショックを受けて苦しむ方に、必ず押さえておいてほしいポイントを挙げます。
・急性ストレス反応は、誰にでも起きるノーマルな反応であり、「心が弱いから」ではなく「心が健康だから」こそ起きる反応です。
・今は大変だと思いますが、一般的に2週〜4週くらいかけて症状は軽減し消失します。
・今は「心の交通事故にあった」「心のケガをした」と受け入れること。そして、早く回復させるためには無理をしないことが大切です。
これをしっかり押さえてください。
※急性ストレス反応については以下のブログ記事でも説明していますので、良かったら読んでみてください。
とてもショックな出来事があった時に落ち込むのは、「心が弱いから」ではなく、あなたの「心が健康だから」
ここまで読んでみて、
「そうか!1ヶ月くらいで治るなら問題ないな!」
「なんとかこの1ヶ月みんなに頑張ってもらって乗り切ろう!」
もしあなたが職場で責任のある立場にあるとしたら、決してこんな風に安心してはいけません。
経営者、管理職に求められる役割は、大きなショックを受けて急性ストレス反応に晒されている社員が、1ヶ月でスムーズに回復できるような支援を行うことです。
つまり、急性ストレス反応は、職場が何もしなくてもみんなが勝手に回復していくわけではない。
職場がどう動くかによって全く違う結果になるのです。
次の回でこの点について詳しく説明します。
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