こんにちは。
エイダーズ山崎正徳です。
今日は、利用者に嫌われることが不安で、利用者からの無理な依頼を断ることができない訪問介護ヘルパー(ホームヘルパー)さんに向けて記事を書きます。
利用者さんや患者さんと少しでも良い関係を築きたいというのは、対人援助職であれば誰にでも共通する思いでしょう。
その中でも、日々ひとりで利用者さん宅を訪問する訪問介護ヘルパーさんは、常にひとりでケアを行わないといけないため、利用者さんとの人間関係の良し悪しがストレスや疲れにとても大きな影響を及ぼすのではないでしょうか。
「先月から担当している利用者さんの影響で寝つきが悪いんです。訪問する度に大きな声で上から目線で嫌なことを言われて、本当に負担です」
「利用者さんはいい人なんですけど、利用者さんの娘さんがちょっと大変で。訪問すると延々と愚痴を聴かされるのでとにかく疲れます」
こんな話はこれまでたくさん聴いてきました。
特に、元々人間関係においてうまく相手と距離をとることができず、断ったり、自分の気持ちを伝えたりすることが苦手な方は、利用者さんとの関係で負担を感じやすいはずです。
例えば
「ついでに、たばこも買ってきてくれない?キャスターマイルド。ついでだからいいよね」
「なんでだめなの?」
あなたは利用者さんから、介護保険ではできないたばこやお酒などの買い物を頼まれ、どうやって断っていいのかわからずに困ってしまっていませんか?
「すいませんね、前の担当も伝えていたと思いますけど、〇〇市では介護保険でお酒の買い物はできないんです」
こうやって断ったあなたですが、利用者さんはここで明るさまに不快な表情で、語気を強めてさらに要求してきます。
「そんなのおかしいよ。これだって生活に必要なんだから。じゃああんたは何のためにここに来てるの?」
「こっちは行きたくても体が悪くてすぐに行けないんだよ。あんたはヘルパーでしょ?たばこくらい買ってきなさいよ」
強く責め立てられたあなた。
この仕事をしていればこういう場面は珍しいことではない。
早く慣れないといけない。
でも、こうやって強く言われると、うまく対応できない。
心臓がドキドキして、うまく息が吸えない感じ?
みんなこういう時、どうやってうまく対応しているのだろうか…。
「あの人は無理なことをけっこう言うところがあるから、ダメなものはダメときちんと言わないとダメよ」
前任のヘルパーから引継ぎを受けた時には、この利用者についてこんな助言を受けた。
みんなちゃんとできないものはできないと断っているんだ。
だから、私も断らないと。
ちゃんと説明すればいいだけのこと。
相手が不満に思おうが、それは仕方ないこと。
頭ではわかっている。
でも、どうしてだろうか。
できない。
断れない。
言えない。
断った時に、相手がどんな反応をするのか。
さらに怒らないか。
がっかりしないか。
私のことを嫌いにならないか。

結局、粘る利用者さんに負け、断り切れずにたばこの買い物を引き受けてしまうあなた。
「あんたは話がわかるね!前の人とは違う!」と利用者さんは喜んでくれた。
気に入ってもらえて、内心ほっとしている。
でも、正直、情けない。
そして、これでさらに断るのが大変になった。
3カ月前にも、他の利用者さんで同じようなことがあって上司に注意されたばかり。
「気に入られたいからって、そういうことしちゃだめよ」
違う。
気に入られたいわけじゃない。
私だって、他の人たちみたいにきっぱりと断りたい。
でもできないんだ。
断れないんだ。
そんな私は、やっぱりこの仕事は向かないのかも。
誰かの役にたちたくて始めたんだけどな。
こんな初歩的なことで躓いてるんじゃ、辞めるしかないかな…。
ほんと、こんな自分が嫌になる。
もっと強くなりたい。
今こそ、あなた自身の「人間関係の課題」と向き合う時期である。
断ることが苦手なヘルパーさんの日常を切り取ってみましたが、あなたもこんな悩みを抱えていませんか?
断りたけど、断れない。
怖くて、不安で言えない。
これは本当に辛く苦しいことです。
私はセミナーやカウンセリングなどでこのような悩みを抱える援助職の方に多く出会いますが、皆さんに共通して言えることは、「とても優しい人」ばかりなんですよね。
真面目で、気遣いができて、一生懸命。
人の役に立つことに心から喜びを感じることができる方。
繰り返しになりますが、とても優しい人たちばかりなのです。
そして、もうひとつの大きな共通点を挙げます。
それは「自分の気持ちよりも、常に目の前の相手との人間関係を優先する」ということです。
つまり、「相手との関係を壊さないこと」「相手に嫌われないこと」「相手に必要とされること」が何よりも優先され、自分の気持ちが後回しになります。
そんなあなたは、利用者さんとの関係だけでなく、同僚や友人、家族との関係においても同様の傾向がありませんか?
例えば
・友達と食事に行く時に、自分が行きたいお店があっても言わずに、「私は何でもいいから」と言って友達に合わせる。
・議事録など、誰がやっても良さそうな雑務を頼まれることが多い。
・シフトの交代を頼まれると、嫌でも断れない。
目の前の相手との人間関係を良好に保つことはとても大切なことですが、同時にあなた自身の気持ちも大切にできなければ、それは「良好な人間関係を保っている」のではなく、「ただ相手に合わせているだけ」です。
それがあなたのこれまでの習慣だとしたら、いざ利用者さんからの要求を断ろうとしても、上手にできないのは自然なことです。
だから、頭ではわかっていても、同じコミュニケーションを繰り返してしまい、傷つくことになるのです。
あなたががんばっているのは間違いありません。
利用者さんのために、そして少しでも職場に貢献できるように、知識やスキルを一生懸命勉強しています。
そんなあなたが、介護職としてそのスキルを活かすためにまず必要なこと。
それは、「人間関係の課題を克服すること」ではないでしょうか。
ただ目の前の相手との人間関係を優先するのではなく、自分の気持ちを大切にすること。
そして、きちんと自己主張できるようになること。
加えて、相手の感情と上手に距離をとり、役割を果たすこと。
これらの課題を克服することが、訪問介護ヘルパーとしてのあなたを支える、強力な足腰になるはずです。

ここまで読んで、「まさに私のことだ!」と思ったあなた。
あなたがまず取り組むべきことは、「共依存」と「バウンダリー(境界線)」を切り口に自己理解を深めてみることです。
「すぐに断れるようになる3つの極意!」みたいなテクニックありきの本を手に取っても、きっとあなたの人間関係の課題は解決しないのではないでしょうか。
なぜなら、あなたの課題はテクニックの問題ではなく、もっと根本のところにあるからです。
小手先のテクニックに走るのではなく、まずは自分のことをしっかりと、深く理解すること。
ここから始めてください。
共依存については以下のカウンセリングのページで詳しく解説しています。
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