こんにちは。
エイダーズ山崎正徳です。
普段、セミナーやカウンセリングなどで援助職の方と話をしていると、利用者への暴言や暴力行為が定着している職場で、自分がどう対応すべきか悩んでいる方に出会います。
「いつも感情的になって患者さんに説教している看護師がいるんですよ。上司も注意しないんです。だから、見ていてとても気分が悪くなります」
「職場全体が言葉遣いが乱暴で、けっこうひどいことを利用者さんに言うんですよ。前は叩いている人もいました。虐待だと思うんですけど、そういう問題意識を誰も持っていなくて、どうしたらいいか悩みます」
あなたの職場でも、こんなことはありませんか?
私も同じような経験はあります。
なんであの人はいつも電話で説教ばかりしているんだろう。
あれじゃカウンセリングというよりも説教だよな。
言葉遣いも汚いし、近くで聴いていても気分が悪いし、相談者に感情的になるのやめてほしいな。
なんで上司は注意しないのかな。いつまであれを認めるのかな。
注意してほしいな。
いやだな。
あんな人と同じ職場で、一緒にされるのはほんと困るな。
こんなことを考えながら働いていたことがありましたね。
私は上司に何度か訴えはしたのですが、「そうだよね」「まずいよね」と言ってくれるものの、上司はその人に注意してくれなかったんですよね。
それで、私は諦めました。
これは、私が「感情的に相談者に接することをやめてもらいたい」という目的よりも、「これ以上訴えても何も対応してもらえないし、本人に直接言っても揉めるだけだから諦めよう」と、職場での人間関係を優先したことになります。
その結果、頻繁にその同僚の感情的な対応を見ることになる。
そうなると、人としての、援助職としての私の自尊心は下がります。
「いやだな、こんなところで働くの」
「もっとちゃんと対応してくれるところで仕事がしたい」
「毎日気分が悪いし、我慢しないといけない」
こうやって、「どんな自分でありたいか」「どんな援助職でありたいか」という自尊心を満たすことができない毎日が続くということです。
まとめると、私は「目的」や「自尊心」よりも、職場での「人間関係」を優先したのです。
その結果、「目的」は果たせず、「自尊心」も下がります。
それが、私が選択した行動の結果なのです。
私に職場での虐待への介入について相談をする人も、構造は一緒だと思うんですよね。
みなさん、何をすべきかはわかっているのです。
職場全体で、虐待の意識をもっと持ってもらいたい。
当事者には上からきちんと注意してもらいたい。
従わないなら、それなりの対処をしてもらいたいたい。
見て見ぬふりなんてしたくない。
でも、それができないから困っているんですよね。
なぜか
それは、「職場での自分の安全を守りたいから」ではないでしょうか。
訴えても相手にしてもらえず、「うるさい人だな」とか思われて疎まれて、職場で浮いてしまわないか。
いじめられないか。
できるだけそれを避けたくて、悩んでいるんですよね。
もちろん、「あれは虐待に該当するかもしれませんから、心配に思うんですが…」などと上司に相談したり、会議で話をしたりして、受け入れてもらえる職場だってあるでしょう。
それにより、人間関係は壊れず、目的は果たせて自尊心も上がります。
これが理想です。
でも、私に相談をする人たちは、そういう職場で働いてないんですよね。
言ってもとりあってもらえないから、悩んでいるのです。
だから、それでも強く訴えるとなると、人間関係の摩擦は避けられない。
それが心配で「何かいい方法はないですか?」と相談をするのです。
これに正論で回答すると、「虐待を黙認するのは、あなたが虐待をしているのも当然です。見逃してはいけません!」と言うことになりますが、とはいっても、私たちは対人援助職である前に一人の労働者であり、それぞれの生活がある。
変なことをして仕事を失いたくない
揉めごとを起こして問題職員と思われたくない
こう思って悩むのは当然だと思うんですよね。
実際に、報道されている施設などでの虐待は、大きな事件になって発覚するか、あとは内部通報が多い印象があります。
職場に訴えても無駄。
人間関係のトラブルが増えるだけ。
だけどこのまま黙認するのは援助職としても人としても耐えがたい。
だから外部に訴えるしかない。
こう思って内部通報するのです。
これは、「目的」を果たせる可能性が最も高いし、内部通報が職場にばれなければ「人間関係」の安全も守れる。
そして、虐待を見て見ぬふりをしなかったことでの「自尊心」もある程度保てる。
まあ、勇気がいりますがひとつの対応です。
色々なやり方があると思います。
別に内部通報を勧めているわけではありません。
今日私が伝えたいのは、「あなたが何を大切にしたいのか」を整理することが大切だということです。

「人間関係の三本柱」であなたが優先したいものを整理する。
あなたの職場で虐待が疑われる行為が日常的にあり、何とかしたいと思うなら、「人間関係の三本柱」であなたの気持ちを整理してみましょう。
三本柱は、「目的」「人間関係」「自尊心」です。
①目的 あなたが相手にどうしてもらいたいのか
例)利用者への暴言をやめてもらいたい
②人間関係 あなたが相手(職場)とどういう関係でいたいのか
例)揉めたくない。人間関係のトラブルは防ぎたい。
③自尊心 どんな自分なら後悔しないか。どんな自分でありたいか。
例)虐待を見て見ぬふりなんてしたくない。
目的、人間関係、自尊心の項目をそれぞれ考えてみる。
そして、その中であなたが何を大事にしたいのかを考えましょう。
全てを満たせれば言うことなしですが、そうならないから悩んでいるのだと思います。
「目的」を達成するためには多少の「人間関係」の摩擦を覚悟しないといけないかもしれません。
手段を選ばずにこっちも暴力的なやり方で上と喧嘩をするなどして「目的」を達成すれば、それはそれで「本当はあんなことしたくなかった」と「自尊心」が下がることだってあります。
一方で、「人間関係」のリスクを避けるなら、「目的」が果たせず、「自尊心」が下がる可能性があります。
これに正解はありません。
あなたが何を大事にしたいのか。
それを決めるのはあなたなのです。
大切なのは、自分の行動には必ず責任が伴うということ。
自分が選択をすれば、それに対するメリットもデメリットもあるということ。
見て見ぬふりをすれば、得るものもあれば失うものもあります。
勇気を出して行動すれば、得るものもあれば失うものもある。
それを受け入れる覚悟であなたが選択して行動する。
虐待をなくすためにできることはなんなのか。
あなたはどうありたいのか。
どんな自分でいたいのか。
つまり、最後はあなた自身の「自尊心」
援助職としての、人としての「自尊心」
これが試されるのです。
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