「愛媛県西条西部地域交流センター」での熱湯風呂死亡事故。突然の惨事に見舞われた職場は生産性が大きく低下し機能不全に陥る。

 

こんにちは。

 

エイダーズ山崎正徳です。

 

ゴールデンウイークの最中、こんなショッキングな報道がありました。

 


愛媛県西条署は1日、同県西条市の福祉施設「西条西部地域交流センター」の浴場で心肺停止状態で浴槽に浮き、死亡が確認された2人の死因について、同市古川甲の無職、竹本英俊さん(81)は溺死と発表した。同市明屋敷の無職、藤田亀市さん(82)は意識障害を起こし、水を吸い込んだ状態で亡くなっていたが、死因は特定できないとした。

 同署によると、発見時、お湯が出る蛇口が開いており、発見から約1時間後の計測で浴槽の温度は約48度だった。入浴客が温度を自由に調節できるようになっていた。2人に目立った外傷はなく、藤田さんに持病がなかったのかなど同署が調べを進めている。

 入浴客の男性が2人を発見し、職員が110番した。浴場にいた別の男性によると、1人の具合が悪くなり、もう1人が浴槽内で介抱しているように見えたという。

経過  
12時00分以降 男性3名の入浴者あり
12時58分頃  第1発見者(4人目)となる男性が浴室に入室すると、男性 2名が浴槽内でうつ伏せ、仰向けの状態となっているのを発見
1名は体を洗うため洗い場で後ろ向きの状態であったため、浴槽内の状況には気付かず第1発見者が事務室に連絡し、救急搬送を要請。センター職員が、心臓マッサージおよびAEDで対応
13時03分頃  救急隊到着 救急車で、済生会病院へ緊急搬送(心肺停止の状態)
13時16分頃   2台目の救急車が到着 救急車で、周桑病院へ緊急搬送(心肺停止の状態)
13時15分頃  警察が到着 現場検証
15時00分時  2名とも死亡確認
16時00分頃  ボイラー等機器類を現場説明
16時33分頃   警察撤収 死因については警察で調査中


安全であるはずの福祉施設の浴場で、二人の利用者が亡くなるという事故。

 

個人的に驚きなのは、風呂の温度を入浴客が自由に調節できるようになっていたということです。

 

老人が日常的に利用する浴場が、誰かの判断またはミスにより48度に上げることもできる状態であったと。

 

恐ろしいですね。

 

さて、今日私がお話したいのは、この事故が起きたこの福祉施設の現在の状況についてです。

 

事故が起きたのは30日。

 

まだ2週間経っていません。

 

私の経験上、今頃このセンターで勤める方たちは、心身ともに非常に大きな負担を負いながら働いているのではないかということです。

 

救急搬送までの間、心臓マッサージ、AEDで対応した職員の方

 

普段よく利用しているお二人の利用者が倒れている光景はあまりにも壮絶だったことでしょう。

 

怖かっただろうし、逃げ出したいほどびっくりしたと思います。

 

でも、そのような状況の中「センターの職員」としての役割を果たすべく、心臓マッサージを必死に行ったのでしょう。

 

警察からもたくさん状況を聴かれたでしょう。

 

結果としてお二人の方が亡くなってしまった。

 

あくまでも私の経験に基づく想像ですが

 

倒れている光景は目に焼き付いているでしょうし、思い出すととても苦しくなるのではないかと思います。

 

そして、「救えなかった」「気づいてあげられなかった」という強烈な罪悪感にも悩まされているのではないでしょうか。

 

現場の浴場を見たり、近づいたりするだけでも動悸がしたり、気持ち悪くなるかもしれません。

 

夜も真っ暗だと思いだしてしまうので、明かりをつけないと眠れないかもしれません。

 

これが、いわゆる惨事現場でとても強いショックを経験した人にあらわれる「急性ストレス障害(ASD)」なのです。

日常的に経験しないような大きなストレスにさらされた時、私たちは、心、身体、行動に様々な反応が出ます。


以下、よく見られる反応を挙げてみます。 

 

☆身体の反応

不眠、動悸、過呼吸、震え、血圧上昇、頭痛、吐き気、疲労感、緊張、食欲低下、腰痛、肩こり、など。

 

☆心の反応

怒り、悲しみ、恐怖、落ち込み、イライラ、不安、不信、自責、罪悪感、自信喪失、無気力、など。

 

☆行動の反応

電話に出ない、コミュニケーションの減少、面倒な仕事を後回しにする、仕事へののめりこみ、多弁、攻撃的、過食、酒量増加、浪費、ネット依存、など。

 

☆その他の反応

・フラッシュバック…出来事が何度も頭に蘇り、その度に苦痛を味わう。

・過敏・過剰な反応…音や刺激などに過剰に反応する。

・回避行動…事故や事件に関わる場所、人、話題などを避けようとする。

 

こういう反応が出ると、多くの人が「私の心が弱いからだ」「もっと強くならなきゃ」と思うのですが、それは違います。

このような反応は、「心が弱いから」ではなく、「心が健康だから」こそ、現れるのです。

今回事故があったこの施設では、今、この急性ストレス障害で苦しんでいる人が複数いるはずです。

 

現場を目撃して救命措置を行ったスタッフだけでなく、亡くなった利用者と関りが深かったスタッフを中心に、強い罪悪感に苛まれているのではないでしょうか。

 

また、今回警察は事件と事故の両方の可能性を考えて捜査しているようですから、仮に事件性があることを推測すると、恐怖や不信感に悩まされる方もいるはずです。

 

誰かが意図的に温度を上げたのか?

 

誰が?

 

利用者?それともスタッフ?

 

まさかそんなはずはない。

 

きっと事故だ。

 

でも、まさかもあるのか?

 

こう考えると、お互いに疑心暗鬼になったり、犯人探しが始まったり、変な噂話が広がったりします。

 

加えて、「こういう時に職場は何も対応してくれない」「こういう職場だから事故が起きるんだ!」なんて、現場で疲弊しきったスタッフは職場に強い不満を抱きます。

 

退職者が出てもおかしくありません。

 

あとは、考えられるのは利用者からスタッフへの攻撃ですね。

 

「おれは前から危険だとスタッフに言っていた。それなのに対応しなかった」

 

「スタッフがきちんと見てないからこうなる。特に〇〇はいい加減だから」

 

こんなふうに、1~2週間は大混乱間違いなしです。

 

だからこそ、この1~2週間でやるべきことを職場が行っておかないと、傷口がより広がってしまいます。

 

急性ストレス障害は、通常2~4週くらいで症状が消えていくものなのですが、ここで無理をしたり、強い負荷が続くと症状がより悪化して1カ月経っても症状が消えません。

 

これがPTSD(心的外傷後ストレス障害)です。

 

惨事に見舞われた職場の対応が後手後手に回ることで、スタッフがPTSDに陥るリスクが大きく上がります。

 

不眠、フラッシュバック、不信感、罪悪感、慢性的な体調不良…

 

こんな症状が継続すると、健康問題だけでなく、スタッフ同士の人間関係のトラブルや、利用者対応でのミス、事故も増えます。 

 

だからこそ、大切なことはひとつ。

 

正しい知識を持つこと。

 

これにつきます。

 

まず、惨事に見舞われた職場は、このブログに書いてあるASDについての認識を職場全体で共有しください。

 

それだけでも、「自分が弱いわけではないんだな」「こういう反応は普通なんだな」「あんまり無理しない方が良さそうだな」と思える。

 

これでとても楽になれて、PTSDを防ぐことにも大きく貢献します。

 

そして、すぐにそのことを教えてくれた職場に対して安心感や信頼を抱きやすくなります。

 

「すぐに対応してくれた」「気にかけてもらえている」

 

この一手がとても大切です。

 

まずは、このブログをブックマークしておいて、何かあったらすぐに開けるようにしておきましょう。

 

そして、経営者や管理職の方、そして職場の産業保健スタッフの方、人事総務担当の方などは、ぜひいつ起きてもおかしくない惨事に備えて基本的な知識をつけてきましょう。

 

特に、惨事に遭遇するリスクの高い対人援助職の職場の方は必須です。

 

職場の惨事ストレスマネジメントセミナー~自殺・事故死・殺人・傷害事件・災害など、突然の惨事に見舞われた職場は、まず何をすべきか~

 

ぜひこのセミナーに参加して、基本的な対応を抑えておきましょう。 

また、惨事に見舞われた職場に対する直接的なサポートも行っています。

 

惨事が起きたら、すぐに専門家を頼ることがベストです。

 

まずはご一報ください。


セミナーのご案内

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