精神科病院「加茂病院」で起きた患者への暴力、わいせつ行為。精神科病棟は援助職と患者の境界線を壊し、暴力が定着する環境が整いやすい。

 

こんにちは。

 

エイダーズ山崎正徳です。

 

これまで、介護現場や障害者施設、保育所などの虐待、暴力事件についてブログで扱ってきましたが、今日は精神科病院で起きた暴力、わいせつ行為について語ってみます。

 

今週、こんな報道がありました。

 

 兵庫県加東市の精神科病院「加茂病院」で、入院している女性患者の胸を触るなどの行為を繰り返した男性准看護師(59)と、男性患者に馬乗りになって平手打ちをした男性看護師(54)が相次いで退職していたことが25日までに分かった。2人の行為について報告を受けた県加東健康福祉事務所は、病院に対して指導を行った。

 同病院によると、准看護師は勤続30年以上のベテラン。昨年12月中旬以降、廊下や病室で女性患者(82)らの上着の首元を引っ張って胸をのぞいたり、胸を触ったりする行為を繰り返し、「気持ちいいか」などと発言していたという。暴言を吐くなど興奮した患者を笑わせてなだめようとしたところ、怒声が減るなどの効果があったため、ほかの患者にも繰り返したといい、「冗談のつもりだった」と話しているという。院内の懲戒委員会で諭旨免職処分を受け、3月15日付で依願退職した。

 看護師は1月22日、食堂でほかの患者のジャムとマーガリンを盗んだ男性患者(70)から取り上げようとした際、床に押し倒して馬乗りになり、平手でほおをたたいた。逃げようとする患者のほおを再びたたき、もう一度床に押し倒してほおを3度たたいたという。近くにいた女性看護師がやめるように言ったが止められず、患者は軽傷を負った。看護師は勤続24年で病棟の主任を務めていた。病院の聞き取りに暴行を認め、3月15日付で退職した。
 同病院は1953年に開院。精神科と神経科があり、約360人が入院している。再発防止策として、院内研修や職員を対象にした不適切事案のアンケートなどを行う。院長は「誠に申し訳ない。今後こういうことがないように職員一丸となって努める」と話した。

 

私も精神科病院で務めた経験あるので、その時の印象で語りますけど、精神科病院の病棟って、そこにいる看護師さんたちの雰囲気で本当に変わりますよね。

 

病院って、看護師が絶対的に強い印象があります。

 

医者よりパワー持ってるなんて全く珍しくありません。

 

だから、病棟の雰囲気はそこにいる看護師さんの影響をとにかく強く受けます。

 

私が病院に入って、初めて色んな病棟を見て回った時に思った率直な印象。

 

それは、「精神科の病棟って、同じ職場なのに、まるで部活みたいに雰囲気が変わるな」ということです。

 

若い男性看護師ばかりの病棟、年配でベテラン中心の静かな病棟、女性看護師だけの病棟など、本当にカラーが違うんですよ。

 

部活で例えれば、熱くて真面目な人が多い野球部、よく統率されてて爽やかなサッカー部、物腰柔らかい感じのテニス部、やる気満々女子の集まり女子バレー部、なんだか近寄りがたくて男臭い応援団

 

本当にこんな感じです。

 

急性期病棟、療養型の病棟など、病棟によってカラーが違って、そこで完成された文化、人間関係があるんですよね。

 

なんだか、それぞれが別の職場として独立してるような、そんな印象を強く受けました。

 

あくまでこれを前提に語りますけど、そうなると、気をつけないといけないのは病棟がまるで家族のように、そこだけの文化、慣習、その「病棟での当たり前」ができるということです。

 

病院という組織の中に、小さな王国がいくつもできて、一つ間違うと、その中に特別なパワーを持った王様が誕生して、権力をふるうこともできてしまうのです。

 

看護師の中でも強者、弱者がはっきりし、その病棟でしか通用しないルールや文化が出来上がる。

 

これが危険なのです。

 

ブラック企業の特徴は、「真っ当なことを口にすると異分子扱いを受ける」ということなんですが、病棟も気をつけないとこうなりますよ。

 

「そんなこと患者さんにしたらまずいですよ」と、真っ当なことを口にする看護師が異分子扱いを受けてしまう。

 

「生意気だな」と目をつけられてしまう。

 

だから、思ったことを口に出せないのです。

 

今回問題を起こした看護師は二人ともベテランですね。

 

「ベテラン」というパワーは、加害者になり得るのです。

 

暴力を振るっているところを女性の看護師が止めているのにやめなかった。

 

ここまでくると、職場というより、まるで家族や部活ですね。

 

父親が母親の制止も聞かずに子どもに暴力をふるう。

 

部活の3年生がマネージャーの制止も聞かずに1年に暴力をふるう。

 

そんな閉鎖的で危険な空間が、この病院の中に存在したということです。

 

この病棟での暴力は、報道されてる事実だけでなく、もっと他にもあったんだろうなと、きっと誰もがそんな印象を持つと思います。

 

完全に援助職と患者という境界線が崩壊していますね。

また、病棟の中でも境界線が崩壊して暴力トラブルが起きやすくなるのは、急性期よりも療養型の病棟だと思います。

 

まず、急性期病棟のように患者さんの移り変わりが早ければ風通しは良いですよね。

 

患者さんや患者家族、関係機関の目が入りやすくなりますから、一定の緊張感が保てて、結果として極端なモラルの低下が定着することは避けやすくなるのではないでしょうか。

 

でも、療養型の病棟のように、入院が長期にわたる患者さんを抱える病棟はどうでしょうか。

 

そこでほぼ同じスタッフ、ほぼ同じ患者さんで毎日過ごす。

 

長期入院の患者さんの場合、家族の面会や関係機関の関わりも少なくなる傾向は否めません。

 

閉鎖された空間により近くなります。

 

加えて、患者さんの病態水準が重く、看護師から「人として尊厳を欠く対応を自分がとられている」という認識すら持ちづらいとしたら。

 

被害を受けている認識は持てても、患者さん自身に解決するスキルや手立てが全くないとしたら。

 

まさに暴力が定着しやすい、極めて風通しの悪い環境が出来上がる条件が整いますね。

 

家族的な距離感で、緊張感を欠き、モラルの低い行動が定着し、事件になるのです。

 

今回の問題の事実関係は全く分かりませんが、私の話はあながち間違いではないんじゃないかと思います。

 

それだけ、精神科の病棟はどこも同じようなリスクを持っているのです。


だからこそ、援助職の方には、暴力や虐待が起きないような技術を学ぶだけでなく、暴力、虐待が発生しやすい人間関係の仕組みを正しく学んでほしいなと思います。

 

自分たちが置かれている環境が、まさに、暴力が起きやすい環境であること。

 

境界線が崩壊しやすい環境で毎日過ごしていること。

 

全員が共通理解を持ち、援助の質、モラルを保つためによく話し合うことです。

 

私のブログを読むだけでも、境界線や暴力のシステムは学べるはずです。

 

まず、このブログにたどり着いたあなたから、学びを深めてみてください。


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