境界線(バウンダリー)を引くということは「相手に納得してもらうこと」ではなく、「あなたの考えを伝えること」である。

  

「彼と別れたいけど、なかなか納得してもらえなくて別れられない」

 

「仕事を辞めたくて話をしてるんだけど、なかなか上司の了承を得られなくて、いつまでもやめられない」

 

「利用者さんにできないことをできないと伝えても、わかってもらえなくて困っている。電話を切ってもらえない」

 

こんな相談をよく受けます。

これは、本当に辛くて大変なことです。

 

自分がどうしたいかが定まっている、または職場としてできることとできないことがある。

 

だから伝えてわかってもらいたい。

 

理解してほしい。

 

でも、わかってもらえない。

 

話を聴いてくれない。

 

結局、「おれは別れない」「忙しいからあとでね」「納得できません!」なんて言われて話がいつまでも平行線のまま。

 

せっかくあなたの気持ちの整理はできているのに、相手が納得しないばかりに、いつまでも関係を変えることができない。

 

気づけば一ケ月、二カ月と経っている。

 

そんな相談はよく受けます。


「伝えること」と「納得してもらうこと」は別である。

そんな悩みを抱えている方に、私がよくする質問があります。

 

それは、「伝えること、納得してもらうこと、この二つが別だと言うことはわかりますか?」です。

 

あなたはわかりますか?

 

境界線を引くことが苦手な方、どちらかというと共依存傾向が強い方は、この質問をすると首をかしげる方が多いですね。

 

逆に、すんなり「わかります」と言う方は、人間関係を器用にこなす方が多い印象があります。

 

「伝える」というのは、「私はこうします」という自分の意思、考え、スタンスを明確にすることですよね。

 

「私はあなたと別れます」

 

「私は3月で会社を辞めます」

 

「会議中に感情的になるのは控えてください」

 

「うちの職場ではこれ以上は対応できません」

 

もちろん、相手の気持ちや立場を十分に尊重することが大前提ですが、こうやって自分の境界線を明確にすることが、「伝える」です。

 

相手との人間関係はもちろん大切ですが、自分の「目的」、そして「自尊心(自分の気持ち)」を優先したコミュニケーションです。


「納得してもらうこと」にこだわると、相手との境界線が引けず、摩擦だけが増えていく。

 

一方、「納得してもらう」はどうでしょうか。

 

「私はあなたと別れたいの。ねえ、わかって。お願い」

 

「退職させていただきたいんです。ダメでしょうか?いつ話し合う時間をいただけますか?いつになったらやめさせてくれますか?」

 

「そうやって会議中に感情的なられると困るんだけど、なんとかわかってもらえないかな?」

 

「うちではあなたの望む対応はできないのですが…いかがでしょうか?お気持ちはわかるのですが、どうかご理解いただけませんか?」

 

こうやって、相手との人間関係を最優先に、相手との関係を壊さないように、相手に納得してもらうために話を続けます。

 

このやり方が間違っているなんて言う気はないし、この方がうまくいくことはたくさんあります。

 

はじめはこういうやりとりで、「お願いする」という形の方がスムーズですよね。

 

言うまでもなく、相手も安心してあなたの話を聴きやすくなります。

 

相手があなたのことを尊重してくれる関係であれば、それでも十分にうまくいきますよね。

 

でも、相手があなたの気持ちを全く尊重せず、自分のことしか考えていなかったらどうでしょうか?

 

相手との人間関係を最優先に交渉を続けるあなたの目的は、「納得してもらう」というやり方を続けることで、果たすことができるのでしょうか?

 

「こんな私でいたい」というあなたの自尊心は大切にすることができますか?

 

職場としての安全やモラルを保って仕事をすることができますか?

 

全てがないがしろにされ、ずるずると時間だけが経っていく。

 

こんなフェアではない関係が続くと思いませんか?

 

だから、「伝える」と「納得してもらう」は別なのです。

 

「納得してもらう」は、気をつけないと、いつの間にかお互いに相手をコントロールし合う関係になっていることがあります。

 

「わかってもらえない」「そういうお前はどうなんだ」みたいに、境界線が保てず、感情的なやりとりに発展してしまう。

 

だから注意が必要なのです。

 


変わらない相手を変えようとするのではなく、自分のスタンスを明確にすることが「境界線を引くこと」である。

 

一方、「伝える」は自己責任です。

 

「私は別れたい」と明確に伝える。

 

相手が納得しないことはもちろんありますよね。

 

でも、別れないと言っている相手にどう対応するかも自分の責任です。

 

「もうこれ以上あなたを納得させるのは無理だから、諦める。でも、私の気持ちは変わらないから会わないね」

 

暴力をやめてくれない彼女にどう対応するかも自己責任です。

 

「そうやって殴ったり物を投げるのをやめてくれないなら僕は出ていくから。それが嫌ならカウンセリングに今すぐ申し込んでよ。それができないなら僕は出ていくよ」

 

いつまでも電話を切らずにわがままばかり言う利用者さんにどう対応するかも職場の責任です。

 

「申し訳ありませんが、何度も言うようにこちらではこれ以上できないし、時間も取れないんです。納得してもらえないなら電話を切らせていただきます」

 

変わらない相手に対して自分のスタンスを明確にする。

 

これが「伝える」です。

 

この違いがわからず、いつまでも「納得してもらう」にこだわっていると、それは相手を変えようとしているわけですから、うまくいくわけないですよ。

 

相手は変えられないんですよ。

 

だから、自分が変わるしかないのです。

 

相手との人間関係はもちろん大切です。

 

でも、それ以上にあなたの気持ちを大切にしてください。

 

今よりも自分の気持ちを大切にできるように、あなたが変わるのです。

 

できるところから、やってみましょう。

 

※繰り返しになりますが、「伝える」も相手の気持ちや人間性を尊重しないと、暴力的なコミュニケーションになります。境界線を正しく保つということは、相手を尊重することなしにはできません。ここを必ず押さえてくださいね。