「話が長い利用者さんに嫌な思いをさせずに話を終える方法はありませんか?」(前編)

 

こんにちは。

 

エイダーズ山崎正徳です。

 

先日のセミナーにご参加頂いた方から、こんな声を頂きました。

 

話が長く、訪問時間が長くなったり、なかなか帰れない利用者さんがいます。
そういう方に対して、嫌な思いをさせずに、話を終わらせる具体的な方法があれば、勉強してみたいと思います。
(相手の感情を引き受けている時点で、バウンダリーが引けてないことになるのでしょうか?)。

 

この悩みは、「援助職に生じる感情」と「バウンダリー(境界線)」の2つの切り口から紐解くことができます。

 

※ブログ執筆者  AIDERS 代表 山﨑正徳のプロフィールは  こちら 


「話が本当に長い。どうしたらいいの?」

 

今日は「援助職に生じる感情」を切り口に説明してみます。

 

利用者さんの話を終えられなくて困ることって、援助職なら誰もが共感できる悩みではないでしょうか。

 

次の利用者さん宅を訪問しないといけないから、早く話を終えないといけない。

 

話を切ろうと思っても、なかなか切ってくれない。

 

ようやく終わるかなと思ったら、また別の話を始めてしまった。

 

なんとか話を終えようと焦る。

 

あんまり強引に終えて相手の気分を害すのも悪いし、ニコニコと相槌を打ちながらそのタイミングを待つ。

 

でも

 

終わらない。

 

結局、予定より10分オーバーして、慌てて自転車をこいで次の訪問先に向かう。

 

相手にとってはたかが10分でも、こちらにとってはこの10分のロスが後々響く。

 

そうですよね?


話を終えられない問題の背景にある、援助職側の「不安」

 

こんな悩みを抱える人からすれば、「嫌な思いをさせずに話を終わらせることができる具体的な方法」があれば、すぐにでも知りたいのだろうと思います。

 

ただ、残念ながら、誰にでも通用する、そんな魔法のようなやり方は私も知りません。

 

知っている人がいれば私も教えてほしいくらいです。

 

私は普段カウンセリングは60分を中心にやっていますけど、基本的に時間ぴったりで終えるようにしています。

 

どうやって相手に嫌な思いをさせずに話を終えるようにしているかというと、基本的なことしかしていません。

 

①面接の際に時間はきちんと確認する。(毎回ではありません)

 

②5~10分くらい前になったらまとめに入る。

 

③まだまだ相手が話したそうなら、「まだお話を聴きたいですけど、残念ですが今日は時間になってしまいました。また次に聴かせてくださいね」と伝える。事務的にではなく、きちんと相手の気持ちを尊重して伝える。まだまだ話したい相手の気持ちに共感しながら、伝えることは伝えて切り上げる。

 

これだけです。

 

でも、この③が苦手な人は多いですよね。

 

私も苦手な時期がありました。

 

ただ伝えるだけのことなんですが、それがうまくできない。

 

なぜか?

 

私は不安だったんですよ。

相手が「もっと話したかったのに」と私に対して不満を持つことが。

 

「嫌われてしまわないか」

 

「次にカウンセリングに来てくれなくなったらどうしよう」

 

こうやって、私が時間を伝えてカウンセリングを終えることで、相手がネガティブな感情を持つことを恐れていたんです。

 

だから、ついつい時間を延ばして聴いてしまう。

 

そうすると、相手も満足しますからね。

 

「60分のカウンセリングなのに、10分多く聴いてもらえた」と。

 

そして、私もようやく安心できるわけです。

 

つまり、話を終わらせられない問題の本質は、私の「不安」なのです。


まずは、あなたの不安を「認めること」から

 

だから、「話を終えてくれない相談者」の問題なのではなく、「カウンセリングを終えることができない私」としてこの問題を語る必要があります。

 

そして、それは話を終えるためのテクニックを学ぶことで解決するのではありません。

 

「自分の不安と向き合い、付き合えるようになること」

 

これが解決への近道なのです。

 

この不安と向き合うこと、付き合うこと。

 

簡単ではありませんが、まずできることは、あなたが、あなた自身の不安により利用者さんとの関係に影響が出ていることを「認める」ことです。

 

この「認める」ができないと、いくらテクニックを学んでもその場しのぎにしかなりません。

 

認められない人は、ずーっと、「あの人は話が長いから困る」と利用者さんの問題にし続けます。

 

この「認める」ができたら、自分の不安をよく把握する習慣をつけましょう。

 

話を切り上げる時に、あなたは不安になっているはずです。

 

「ここで話を終えたら、怒るかな」

 

「嫌われたらどうしよう」

 

こうやって頭の中で考えながら、不安という感情は生じているはずなのです。

 

この「不安」に気づいて、とにかく意識するようにすること。

 

次に、あなたが気づいた不安を同僚や仲間に話して、共有してください。

 

ネガティブな感情が共感されると軽くなり、段々と不安と付き合えるようになっていきます。

 

これをしつこく繰り返してください。

 

諦めないで、繰り返す。

 

そして、「不安」と「行動」を切り分けられるようになることを目指す。

「嫌われないか不安」だけど、「そろそろ終えないといけないから話を終える」

 

これができるようになると、本当に楽になりますよ。

 

ただ、あまりにも不安が強いと、「わかっちゃいるけど、怖くてできない」という悩みを抱えることになります。

 

そういう課題を抱える方は、カウンセリングで解決を目指すことをお勧めします。

 

あなたの不安の本質にどんな問題があるのか、援助職自身に生じやすい感情の本質を理解することが、解決への最短ルートです。

 

以上、前編は「援助職に生じる感情」を切り口に解説しました。

 

後編は、「人間関係の境界線」を切り口に説明します。ぜひ読んでみてください。

 

続きはこちら → 「話が長い利用者さんに嫌な思いをさせずに話を終える方法はありませんか?」(後編)