バウンダリー(境界線)基礎講座7日目「ダブルバインド」

  

バウンダリー(境界線)基礎講座7日目です。

 

※ぜひ1日目から読んでみてください。

1日目 「バウンダリーとは」

2日目 「安全な人間関係の距離感を学ぶ」

3日目 「自分の感情は自分の責任!」

4日目 「支配・被支配の関係」

5日目 「共依存の関係」

6日目 「無関心の関係」 

 

※ブログ執筆者  AIDERS 代表 山﨑正徳のプロフィールは  こちら 


2つの矛盾したメッセージで相手を縛り付ける「ダブルバインド」

 

今日は「ダブルバインド」です。

 

「ダブルバインドってなに?」って思っていると思いますが、まず、この上司と部下のやりとりを見てください。

 

社長「みんな、いつも本当によくがんばってるね。ありがとう!みんながより働きやすくなるように、思うことがあれば意見を出してほしいな」

 

社員A「もう少し休みがとりやすくて、女性が働きやすい環境だとありがたいです。毎日この業務量だと…家のことがちゃんと出来なくて…」

 

社員B「業務内容が複雑になってきています。マニュアルを整備して、役割分担を明確にした方がいいかなとは感じます」

 

社長「(不機嫌な表情で)うちはずっとこのやり方でやってるし、嫌なら辞めてもらってもかまわないよ。ちょっと考えが甘いんじゃないかな」

 

次に、こちらのやりとり

 

課長「どう?思ったことを聞かせてくれないか?率直に言ってよ。うちの部署は、自由に意見を出しあえる雰囲気を大切にしているからさ」

 

部下「そうですね…あの、今回のトラブルは、もちろん私の判断のミスがありましたけど、営業から事前に必要な情報が上がってきていれば防げたことだと思います」

 

課長「うーん…君さー、それは言い訳だよ。自分のミスを棚に上げて、営業の問題にするなんてありえないよ。僕が納得するようにちゃんと説明してよ。明日までに報告してね」

 

部下「……はい…」

 

このやりとりを見て、どう感じますか?

 

上司の言っていることとやっていることが矛盾しているのがわかりますか?


「安定しない境界線」が相手を振り回し、関係を壊す。

  

初めは、部下の気持ちを最大限に尊重して安全な関係を築いています。

 

でも、安心した部下が伝えた内容が気に入らなかったようで、急に不機嫌になり部下の安全を奪いました。

 

部下に対するバウンダリーが定まらないどころか、あまりにもその時の気持ちで極端になっていますよね。

 

はじめはこう。優しい上司。

でも、急にこうなる。支配者上司。

そして翌日にはまた優しい上司になってたり

その時の気分で距離感がだいぶ変わるので、付き合う側は混乱します。

 

皆さんもありますよね?こういう人と関わって嫌な思いをしたということ。

 

例えば、これが家族など親しい関係でのやりとりなら、その場で抗議できますよね。

 

「自分が『何でも言え』と言ったんでしょ?なんで怒るわけ?ひどくない?」

 

でも、職場の上司だったり、お客さんだったり、相手がパワーをもっていたらどうでしょうか。

 

あなたはその矛盾を指摘できず、毎回極端に変わるバウンダリーに振り回される。

 

「残業しないで早く帰ろうね!健康を大切に!」と言いながら、クレームが入ると「質を落とすな!それでもプロか!」と怒る。

 

「君ももう新人じゃないんだから、自分の考えで動く習慣をつけていこうよ」なんて言いながら「なんで勝手にやるんだ!」とキレられる。

 

このように

 

2つの矛盾したメッセージや態度に縛られ

 

力関係により矛盾を指摘することができず

 

その矛盾した状態から逃げることもできず

 

メッセージに応じなければならない状態を、

 

ダブルバインド=二重拘束 と言います。 


ダブルバインドをする人は、実は「根が優しい人」が多い。

 

このダブルバインドは、受けるととっても苦しみます。

 

正解がないし、対応の仕方がわからないからです。

 

その日の相手の気分によって正解が変わる。

 

昨日はOKだったことで今日は怒られる。

 

だから、被害を受け続けるとうつっぽくなるし、怒りや悲しみ、無力感が強くなる。

 

その内、「いいか、課長の言うことに振り回されるな。いちいち反応するな。毎日言うことが変わるけど、反応するだけ無駄だ。何も考えずに謝れ」みたいな話を社員同士がするのです。

 

家庭でも一緒です。

 

母親が昨日は笑って許してくれたことでも、今日は怒鳴りつけられる。

 

「ママはあなたのことが一番好きよ」と言いながら、翌日は口も利いてくれなくなる。

 

その時の気分であまりにも違うのです。

 

無自覚にダブルバインドをしている人は、気分の波が激しいんですよね。

 

「いい上司でいたい」「いい母親でいたい」みたいな理想があって、それができる時とできない時の差が激しいのです。

 

できる時はすごく優しくていいんですけどね。

 

敢えて言うなら、根が優しい人が多いんですよね。

 

でも、人間関係が苦手なのです。

 

思い通りにいかないとすぐにキャパオーバーになるので感情的になってしまう。

 

だから、付き合う側は混乱するんですよ。

 

バウンダリー(境界線)が定まらなすぎですからね。 


暴力加害者やクレーマーのダブルバインドに要注意!

また、意図的にダブルバインドをしている人もいます。

 

DVだったり、パワハラだったり、クレーマーだったり。

 

相手を矛盾するメッセージでがんじがらめにするのです。

 

クレーマーがよく使う手なんですが、「黙ってないでなんとか言え!」と言うので、言うと「なんだその言い方は!」みたいな。

 

結局何を言っても怒られるだけなんです。

 

そうやって相手を屈服させて、コントロールしたいわけです。

 

また、パワハラ上司がよく使う手段なんですけど、「本当にあなたはダメですね。何度も同じことを言わせないでください」なんていうパワハラメールを送って、部下が謝ったら「OK!(^∀^)」とニコニコで返信する。

 

恐怖を与えて、次は一気にフレンドリーになる。

 

これをやられると、被害者は「怖さ」と「嬉しさ」で自分の気持ちがよくわからなくなります。

 

これでますます距離がとれず、巻き込まれ、被害に遭いやすくなるのです。

 

ダブルバインド、まさに恐るべしですね。

 

今日の話を読んで、自分が被害を受けていることを自覚する人も少なくないと思います。

 

被害を受けていると本当に自分が悪いんじゃないかと思ってしまい、被害に気づきにくくなるのも特徴です。

 

あなたもダブルバインドを受けて苦しんでませんか?

 

大切なのは、自分がダブルバインドを受けているということに気づくこと。

 

そしてできるだけ巻き込まれないように、周囲のサポートを得て距離をとることです。

  

バウンダリー(境界線)基礎講座も、次で最終回です。

 

続き

バウンダリー(境界線)基礎講座8日目「人間関係の距離感チェック」