こんにちは。
エイダーズ山崎正徳です。
今日は、パワハラをする社員を注意したいけど、その社員がメンタルヘルス問題を患っているために注意するかどうかをためらっている管理職や人事担当者の方に向けて記事を書きます。
「注意したら、うつが悪くならないかな??」

パワハラをする部下がいて対応に困っています。
実はその社員は去年から心療内科にかかっているときいています。
薬をもらっているようです。
仕事中、けっこう激しく新人にキレたり、時には上司である私にまで感情的になったり、とにかく大変なんです。
注意しなきゃいけないなーなんて思うんですが
でも、これで注意したらうつが悪くなるなんてことないですかね。
そう考えると、なんだか注意しづらくて
こういう悩みは、とても難しいですよね。
注意したいけど、したらうつが悪くなるのではと心配
でも、このままほっとくわけにもいかない
そうですよね?
私はこういう相談をこれまで多く受けてきましたけど、ひとつだけはっきりと言えることがあります。
それは、
「うつ病の悪化を防ぐ」か「パワハラをやめてもらうか」
「パワハラ職員の健康を守る」か「職場の安全を守るか」
この2択で考えるのは、大間違いだということです。
放置すると、うつ病もパワハラも悪化の一途をたどる。
というのも、このままこの社員に何も注意をしないことが、うつの改善につながるはずがないのです。
「1年後、この社員のうつが改善して、仕事に安定して取り組んで、同僚や新人、上司との関係も良好に保っている」
そんな未来が訪れる可能性は、限りなく低いと思ってください。
まず、パワハラをする人が、どのようにしてハラスメント行為をエスカレートさせていくのかを説明します。
①思い通りにいかないと感情的になって相手を攻撃する習慣がつく。
②周りに怖がられ、距離を置かれる。(直接的でなくても本人は気づきます)
③周りから距離を置かれているのがわかるので、自尊心が下がる。(本当は仲良くしたいのに避けられてしまうため、惨めさを感じる)
④管理職からもビクビクされてしまい、余計にフラストレーションが募る。
⑤怒り、不満、悲しみなどの負の感情が募る。
⑥余計に周囲にキレる。
⑦余計に孤立し、ストレスがたまる。
この繰り返しです。

さて、これでうつ病はよくなりますか?
長い目で見て、今きちんと注意をしないことが、本人の健康面にとって、そしてキャリアにとってプラスになりますか?
職場にとって何か良いことはありますか。
もうわかりますよね。
放置しておいても、本人にとっても周りにとっても職場にとっても、一つもいいことがありません。
逆にパワハラを受ける社員が激しく疲弊し、体調を崩す。
こんな悪循環になっていきます。
病気を切り口に見るのではなく、業務上の問題を切り口に見る習慣をつける。
「じゃあ、注意はしなくても、本人が孤立しないように目をかけてあげれば大丈夫ですね」
なんて思う管理職の方もいると思うのですが、それはお勧めしません。
それは、管理職のあなただからこそ思えることで、実際にパワハラ被害を受けている周りにそんな余裕はありません。
毎日のように威圧的な言動を受け、傷つけられる。
些細なミスできつく言われ、辛い思いをする。
そんな状況におかれたら、関わりたくないと思うのが普通で、当然ながら距離を置きます。
結局、放置すると孤立し、うつも悪化します。
だから、いいとこ取りなんて絶対無理です。
こういう問題の対応の原則は
「うつ病が悪くなるのでは?」と病気を切り口に問題を見る(疾病性)と、絶対にうまくいきません。
病気を切り口にするのではなく
「仕事をする上で明らかに支障になっている、目に見えてわかる事実(事例性)」を切り口に見てください。
明らかに業務の支障になっている事実
それは、「職員の安全を脅かす言動」です。
業務中に暴言を吐く。
感情的になる。
こういう目に見えてわかる事実を切り口に扱うんです。
そして、きちんと伝えて改善を求めるんです。
「職場で大きな声を出したり、感情的になる言動をやめてほしいんです」と。
そこで、「そんなこと言ったって、新人の覚えが悪いし、怒らざるを得ないですよ!」なんて言われても
それは「問題のすり替え」ですよ。
新人の覚えが悪くてイライラしても、パワハラをしていい理由にはなりませんからね。
覚えが悪くてイライラするのと、パワハラをするのは別です。
本人の気持ちを聴いてあげるのは必要ですが、パワハラを認めてはいけないんですよ。
「私、最近うつが悪化していて、イライラして言っちゃうんですよ。こうやって注意されるのも私が悪いと言われてるみたいで辛いです!」とか言うなら
こう問題を捉え直しましょう
「感情的な言動がコントロールできないほど、うつ病の状態が悪い」
「上司からの注意・指導に耐えられないほど、うつ病の状態が悪い」
ということは、通常の業務ができる状態ではないということにもなるのです。
診断書の提出を求めるとか、本人の同意を得て診察に同席して主治医の意見を仰ぐとか、職場としての対応を検討しないといけません。
どちらにしても、病気が悪くてパワハラをしてしまうなら、ちゃんと治療に専念させないといけませんよね。
「わかりました。主治医が必要と判断するなら、業務の負担を一時的に軽減することも考えます。その分きちんと治療に専念して、感情のコントロールができるようになってください。まずは一ヶ月やってみて、また面談しましょう」
みたいに、伝えると良いですよ。
業務軽減ができるかどうかも含めて、
「うつがあるからパワハラが直らない」と言うなら、きちんと診断書をとるなりして職場としてできることを考えましょう。
だって、「うつがあるからパワハラします」なんて認められるわけないですからね。
じゃあ、働き続ける内はずっとやってもいいんですか?
パワハラしちゃうほどうつが悪いなら、今度は職場が対応を考えないといけません。
ポイントとしては、
問題は、「うつ病であること」ではなく、「パワハラ」なのです。
別の言い方をすれば、
「うつ病であろうと、パワハラをせずに普通に働いてくれればなんの問題もない」のです。
ここの軸をぶらさずに持つと良いですよ。
だから、「早くうつを治してね」ではなくて
「パワハラをしないで働いてね」なのです。
そのためにも、きちんと注意をした方が、本人にとっても職場にとってもプラスになるのです。
ちなみに、これだけ説明しても、
「うつが悪くなるから今回は注意するのをやめて様子をみましょう」という対応をする職場はけっこう多いです。
結局、怖いんだと思います。
面倒なんです。
でも、一年後には必ず事態が悪化しているんですよ。
「確か、あのとき山崎さんは注意した方がいいって言いましたよね」
こう言われたこと、一度や二度ではないですよ。
このブログで話をした内容については、以下の「困った社員への対応ブログ集」でより詳しく学ぶことができます。
ぜひご覧になってみてください。
★職場の問題についての無料相談・動画配信を行っています。★
無料相談は、経営者、管理監督者、人事総務担当者、産業保健スタッフの方がご参加可能です。